日本人の死因、断トツ1位の病気
厚生労働省による平成27年の人口動態統計月報年計(※1)によると、日本人の死因順位1位は悪性新生物。全死亡者に占める割合は、28.7%である。悪性新生物とはいわゆる「がん」のことを指し、上皮性のがんや肉腫、白血病などの送血器由来の悪性腫瘍を含む。上皮性のがんは、臓器や器官を覆う表面組織から発生するがんで、胃がんや大腸がん、子宮がん、乳がんなど多くのがんが含まれる。
日本の死因トップ10の病気と検査方法シリーズ第●回は、平成27年の人口動態統計月報年計で370,131人が死亡したとされる悪性新生物について紹介する。
がんの検査方法
悪性新生物であるがんは、上皮や非上皮、あるいは造血器といったどの組織に由来するかで分類されるだけでなく、生じる臓器によって細かく分けられる。それぞれで症状が異なり、必要となる検査方法も大きく異なるため、がんの診断に用いられる検査は複数ある。
- 血液検査(腫瘍マーカー)
- 内視鏡検査
- 病理検査
- 超音波検査
- エックス線検査
- CT検査(Computed Tomography:コンピューター断層装置)
- MRI検査(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)
- PET検査(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影)
がんでは、一概にどの検査が最善ということではなく、これらの検査を複数組み合わせることで確定診断へと導いていく。多くのがんで共通している検査は血液検査や病理検査で、その他必要に応じてCTやMRIなどの画像検査を追加していく。
がんにおける血液検査
がんでは、血液中における腫瘍マーカーの変化を血液検査によって調べることが多い。腫瘍マーカーとは、がんが発生した場合に体内に発生する物質で、各がんによって異なるため、特異性が高い。がん発生の有無や大まかな発生部位を推定することができるため、腫瘍マーカーは、がんのスクリーニング検査としては非常に有用な検査だ。
がんにおける病理検査
血液検査や画像検査で得られる情報だけでは、がんの確定診断を下すことは難しいケースが多い。そこで重要となるのが病理検査だ。病理検査とは、病変部の一部を採取して、顕微鏡で細胞や組織の形態を観察する検査である。がんは正常な細胞とは大きく異なる形態を呈するため、病理検査を実施すれば確定診断を下すことができるのだ。
がんにおける画像検査
CTやMRIといった画像診断を用いれば、がんの広がりや深さ、転移の有無などを知ることができる。がんの治療方針を立てる上で、これらの情報は欠かせないものであり、ほとんどのケースで実施される検査だ。
それぞれの検査には被曝リスクや身体的な負荷などのデメリットがある場合もあるが、さまざまな検査を実施して、できるだけ詳細な情報を得ることががん治療を成功させるカギとなる。
※1 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei14/dl/10_h6.pdf

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)