2017.8.24

人間ドックのオプション、動脈の硬さ・詰まりを調べる検査「頸動脈エコー」

超音波によって頸動脈の硬さや詰まりを調べる検査

人間ドックのオプションには、血液検査や、MRI、CT、マンモグラフィーやエコー、内視鏡などの画像診断など、さまざまな種類がある。人間ドックを受診する際は、受診者それぞれが気になる部位や病気リスクをより詳細に調べることができるオプション検査をぜひ活用してほしい。今回は、動脈の硬さや詰まりを調べる検査「頸動脈エコー」を紹介する。

頸動脈エコーとは、超音波を利用して、全身の血管の動脈硬化や狭窄、閉塞などを評価する検査だ。とりわけ、脳血管や冠状動脈の状態を推測する際に活用されることが多い。検査によって実際に画像化されるのは頸動脈だけであるが、血管の状態はほかの部位との相関性が高いため、全身の血管について評価することも可能なのだ。

頸部に検査用のゼリーを塗布して、超音波を発する器具(プローブ)を当てるだけで、タイムリーに画面に動脈の状態が映し出される。通常の超音波検査と同じく、X線による被曝はないのも特徴だ。

動脈硬化の有無は、血管壁の厚さでわかる

頸動脈エコーでは、まず動脈硬化の有無を調べる。血管壁には内側から内膜である第1層、中膜である第2層、外膜である第3層の3層があり、この第1層と第2層の内、中膜複合体「IMC」と呼ばれる部分の厚さを調べる。動脈硬化があれば、画像上に血管壁の肥厚が見られ、IMCの値が1mm以上になると、動脈硬化が疑われる。ちなみに、動脈硬化のリスク因子としては、加齢、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙などが挙げられる。

剥離したプラークが脳梗塞を引き起こす

血管の詰まりを見るうえでも、頸動脈エコーは有用である。血管内では、ときにプラークと呼ばれるコブのような、限局性の隆起が見られることがある。このプラークは、血管を狭窄させ、血液の流れを悪くするだけでなく、剥離して血流に乗り、血管を詰まらせることがあるため要注意だ。そうして起こるのが脳梗塞などの血管障害である。頸動脈エコーでは、そうした血管プラークの有無や大きさなどを調べ、治療方針に役立てていく。

難易度が高い脳血管や冠状動脈の検査。まずは頸動脈エコーが有用

脳梗塞や心筋梗塞のリスクを調べるのであれば、頸動脈ではなく、直接、脳や心臓に超音波を当てたらどうか、と思う人も少なくないだろう。しかし、脳や心臓というのは、比較的、体の深部に存在しており、超音波では正確に検査することが困難だ。一方、頸動脈は表層に位置しており、超音波でも十分検査することが可能であるため、脳梗塞や心筋梗塞などの血管系の疾患リスクを調べるために、頸動脈エコーは有用だ。より詳しく調べたい場合は、脳の血管を調べる頭部MRAなどを受診してほしい。

高血圧や糖尿病の既往歴がある人は、一度検査を

高血圧や糖尿病、脂質異常症などの既往歴がある人は、動脈硬化のリスクが高い。同時に、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まるため、早めに検査を受けておくことをおすすめしたい。頸動脈エコーであれば、10〜20分程度の時間で調べることができ、被曝リスクもないため、比較的受けやすい検査といえる。
*出典:健康医学予防協会webサイト

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部