2017.3.23
乳がんと腫瘍マーカー

乳がんは血液検査でわかる? 【初めての乳がん検査 Vol.5】

早期の乳がんに血液検査は有効ではない

多くのがん検査では、早期に血液検査が実施され、診断材料として活用される。腫瘍マーカーと呼ばれる物質の濃度を見ることで、がんの存在を調べることができる。けれども、早期の乳がんには、血液検査は有効とはいえない。乳がんにもいくつか腫瘍マーカーがあるが、早期がんに対しては著しく精度が低いのだ。初めての乳がん検査シリーズ第5回は、女性の部位別がん罹患数ナンバー1の乳がんを発見するための検査のひとつである血液検査について詳しく解説する。

術後のモニタリングに有効な乳がん腫瘍マーカー

乳がんの腫瘍マーカーは複数存在するが、臨床の現場では「CA15−3」と「CEA」のふたつが用いられることが多い。これらの腫瘍マーカーは乳がんのステージⅢ~Ⅳ期に高値となる物質で、ひと通り手術などが終わったあとの進行や再発の確認、治療効果の判定などに活用されている。術後もし乳がんが再発したら、これらの値が高値となるため、モニタリングするうえででは非常に有用な腫瘍マーカーといえる。ただし、乳がんが体内にあれば必ず腫瘍マーカーの値が高くなるということではなく、高値を認めないタイプの乳がんも存在する。つまり、腫瘍マーカーをチェックするだけで、乳がんの再発や転移を見つけられるわけではないのだ。ちなみに、これらの基準値は以下の通りである。

  • CA15−3 :25.0U/ml以下
  • CEA :5.0ng/ml以下

腫瘍マーカーについては、「乳がんの再発・転移の追跡に有用な腫瘍マーカー「CA15-3」とは?」や「消化器系がんの腫瘍マーカー「CEA」とは?」で詳しく紹介している。

乳がんはマンモグラフィーや超音波検査で診断を

乳がんには、マンモグラフィーや超音波など、診断に有効な検査がいくつもある。それらを組み合わせることによって、早期の乳がんでも発見が可能となる。もちろん、問診や触診といった基本的な検査も乳がんにおいては重要な診断材料だ。一方で、乳がんにおける血液検査では、わかることが限られているため、単体での診断は困難だ。再発の有無や抗がん剤の効果を確認するという目的に限られてくる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部