2017.7.13
人間ドックのオプション検査

女性に受けてほしい人間ドックのオプション、子宮内膜症がわかる「膣内超音波検査」

人間ドックのオプション

医療施設によって種類に差はあるが、人間ドックには別料金で受けることができるオプション検査が多数ある。MRIやCT、マンモグラフィーやエコー、内視鏡などの画像診断などが挙げられる。受診者が気になる部位や病気リスクに対して、より詳細に調べることができる検査だ。

例えば肺がんが心配な人は、肺ドックを追加するとよい。基本検査に含まる胸部X線検査だけではわからない病変を発見できる胸部CT検査や、痰内のがん細胞を調べる喀痰(かくたん)細胞診などが行われる。女性はレディースドックを受診する人も多いだろう。これは基本検査に、乳がんを発見するマンモグラフィーやエコー、子宮頸がんを発見する子宮頸部細胞診など、女性ならではの疾患を見つけるためのオプション検査が付いているコースだ。

女性が人間ドックを受ける際は、乳がんや子宮頸がん以外にも、子宮や卵巣の疾患を一緒に調べてほしい。例えば「子宮内膜症」。痛みや不妊の原因で、悪化すればがんをも引き起こす疾患だ。今回は、女性が人間ドックを受診する際に、追加で受けてほしい検査のなかから、子宮内膜症を見つけることもできる「膣内超音波検査」を紹介する。

20代以上の女性が発症する子宮内膜症

子宮内膜症は、現代女性に増えている疾患で、20~40歳代の性成熟期に好発する。本来、子宮内にある子宮内膜に似た組織「子宮内膜症組織」が子宮以外の部位に生じ、月経のたびに増殖、悪化していく疾患だ。子宮内膜は、生理のときに月経血として体外に出て行くが、子宮外にできた子宮内膜症組織は、体内にとどまってしまい、それが炎症や周辺組織と癒着を引き起こし、痛みや不妊の原因になる。子宮内膜症の患者は30~50%が不妊症というデータもある(※)。

また、卵巣に子宮内膜症組織ができると、袋状に血液が溜まり、チョコレート嚢胞を引き起こし、やがて卵巣がんを引き起こすリスクもある。チョコレート嚢胞と卵巣がんの合併率を調べたデータでは、40代は4.11%と低いが、50代は21.9%、60代では49.09%と増加している(※)。

子宮内膜症を見つける膣内超音波検査とは

膣内超音波検査とは、超音波を発する棒状の器具を膣内に挿入し、体内から超音波検査を行う方法だ。お腹などから超音波を当てる通常の経腹超音波検査と比べ、より子宮に近い位置から超音波を当てることができるため、鮮明な画像を得ることができる。子宮や卵巣の形や大きさを把握でき、子宮筋腫や子宮がん、子宮内膜ポリープの有無や、卵巣がんや卵巣嚢胞、チョコレート嚢胞などを発見することができる。ただし、この検査だけでは、子宮頸がんや卵巣がんとの鑑別は困難であるため、併せて子宮頸がん検査も受けることが望ましい。

子宮内膜症の治療法

子宮内膜症の治療では、おもに薬物療法と手術療法が行われる。軽症の場合は薬物療法が行われ、低用量ピルなどが用いられる。癒着やチョコレート嚢胞などある場合は手術療法が行われる。年齢や症状の度合い、病変部位などに応じて、保存手術か根治手術のどちらかが選択される。ちなみに根治手術では、子宮全摘出や付属臓器の切除が行われるため、出産の希望がない患者に対してのみ行われる。

※日本子宮内膜症啓発会議 子宮内膜症 Fact Note 小畑孝四郎:卵巣子宮内膜症の癌化とその治療.日産婦会誌2003; 55: 890-902より

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部