2016.6.23
卵巣がんの腫瘍マーカー

卵巣がんの腫瘍マーカー「CA602」とは?

再発率の高い卵巣がんを調べる腫瘍マーカー

Blood sample with progesterone testing result腫瘍マーカーは、体内にがんの腫瘍ができると、特殊な物質が大量につくられ、血液中に出現するという特性を利用した血液検査だ。今回は、卵巣がんを発見するための腫瘍マーカーであるCA602を紹介する。

卵巣がんの病期はⅠ~Ⅳに分類され、それぞれ治療法も異なるが、大まかに薬物療法と手術療法を併用するという点で共通している。抗がん剤で腫瘍を小さくしてから手術を行うこともあれば、術後の再発を防ぐために薬剤を用いることもある。特に上皮性卵巣がんは再発率が高いため、術後の薬物療法は重要となる。

上皮性卵巣がんは、治療を受けた患者の半数以上が再発したというデータもある。再発の時期は治療後2 年以内が最も多い。そこで活用したいのがCA602と呼ばれる腫瘍マーカーだ。CA602は卵巣がんの手術後の再発を調べるなど、治療のモニタリングで用いられることが多い。

CA602は子宮内膜症性嚢胞など偽陽性となる疾患が多い

CA602は上皮性卵巣がんに特異性を示す腫瘍マーカーである。卵巣がんが疑われるケースでは、CA125とともに血中濃度を調べられることが多い腫瘍マーカーだ。基準値は63U/ml以下で、この値を超えた場合は卵巣がんが疑われる。ただ、CA602が高値だからといって上皮性卵巣がんを発症していると断定できるわけではない。

CA602は上皮性卵巣がんに特異性を示すものの、そのほかに偽陽性となる疾患も多々あるのだ。具体的には、子宮体癌や肝細胞癌、胆道癌などが疑われる。とりわけ子宮内膜症性嚢胞との偽陽性率が高く、CA602の値だけで鑑別するのは困難といえる。けれども、両者には嚢胞と悪性腫瘍という根本的な違いがあるため、CTや腹部エコーなどの画像診断を行うことで鑑別も可能となる。

CA602は値が高くなるほど卵巣がんの確率が高まる

CA602は卵巣がん以外の疾患でも異常値を示すことがあるが、値に応じてそのほかの可能性を切り捨てることもできる。例えば、173例の卵巣腫瘍に対して行われたCA602のスクリーニング検査では、63U/ml以上・200U/ml未満の群で子宮内膜症性嚢胞と卵巣がんがほぼ半々だった。一方、200U/ml以上の群では80%以上卵巣がんだったという。これはあくまでひとつの統計データに過ぎないが、CA602が高値であればあるほど、卵巣がんを患っている可能性が高い傾向にあるといえる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部