2017.7.6

「ヒトパピローマウイルス」への感染が原因の子宮頸がんを調べる検査とは?【感染が原因のがんシリーズVol.3】

子宮頸がんはヒトパピローマウイルスの感染と関連あり

婦人科系のがんのなかで、もっとも多い子宮がん。なかでも、子宮の入り口である子宮頸部に発生する悪性腫瘍を子宮頸がんといい、比較的、婦人科検診で発見されやすいがんだ。

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染が関連しており、90%以上の患者から発見されている。

オーラルセックスも要注意! 性交渉によって感染するヒトパピローマウイルス

ヒトパピローマウイルスへの感染は、おもに性交渉によって起こる。つまり、性交渉経験のある男女、誰もが感染リスクがある。「性経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルス」と厚生労働省は示しているように、感染そのものは珍しくない。多くの場合は、免疫力の影響で症状が発生しないうちにウイルスが排除されると考えられている。しかし、なんらかの原因で長期感染した場合は、一部の型のヒトパピローマウイルによって女性の場合は子宮頸がん、男性の場合は尖圭コンジローマ、肛門がん、陰茎がん、咽頭がんなどを発症する。ヒトパピローマウイルは、現在100種類以上が発見されており、そのうちの約40種類が子宮で病気を引き起こす。さらにそのうちの15種類程度ががんに関連するウイルスで、「ハイリスクHPV」と呼ばれている。2008年の子宮頸がん発生数は約9800人、2011年の尖圭コンジローマの発生数は約5200人にのぼる。

性的接触で感染するヒトパピローマウイルスだが、口腔内にも感染巣を作るため、オーラルセックスでも感染するので注意が必要だ。

だたし、ヒトパピローマウイルスに感染したからといって、必ずしも子宮頸がんを発症するわけではない。Colorda内メディカル道場にてナビゲーターを務めた「LOVE49」さんによれば、「高リスク型HPVに感染した女性が子宮頸がんを発症する割合は、1000人に1人か2人」とのことだ。詳しくは「Vol.3 HPVに感染しても無症状、男女とも発症するまでわからない!? 」で紹介している。

ヒトパピローマウイルスへの感染を調べる検査

大きく分けると方法はふたつ。ハイリスクHPVの感染を検出する「ハイブリッドキャプチャー法」と、ヒトパピローマウイルスのタイプを個別に調べる「PCR法」がある。いずれも、綿棒などで子宮頸部をこすり細胞を採取する子宮頚部細胞診だ。ハイブリッドキャプチャー法は、子宮頸がんの疑いがある場合は、保険適応で行うことができる。

子宮頸がんの検査法

子宮頸がんの検査も、ヒトパピローマウイルスのテスト同様、子宮頸部および頸管内を綿棒またはヘラなどでこすり、細胞を採取する方法だ。得られた細胞は、パパニコロウ染色と呼ばれる処置が施され、がん細胞がある場合は、細胞に特有の色が現れる。異常が見られれば、頸部組織診というさらに詳しい検査へと進む。頸部組織診は、コルボスコープという膣拡大鏡を用いて病変部を観察しながら、2~3mm程度の比較的大きい組織を採取して、生検を行う。

国立がん研究センター がん情報サービスによると、子宮頸がんの罹患数は年間約10,900例、死亡者数は2900人。また、罹患率は20代後半から40代前後に増加し、若年層でも増えている。同センターは、「子宮頸がん検診は、科学的な方法により、がん検診として効果があると評価されており、検診の実施による死亡率の減少が明らかになっています。20歳以上の女性では、2年に1回、細胞診による子宮頸がん検診の受診が推奨されています。」と呼びかけている。検診は各自治体が主体となり実施しているので、一度、お住まいの地域の制度をチェックして欲しい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部