2017.7.27
腫瘍マーカー「CYFRA」

扁平上皮がんの腫瘍マーカー「CYFRA」が高かった場合の次のアクションは?

腫瘍マーカー「CYFRA」が高値になる扁平上皮がん

腫瘍マーカーとは、癌細胞が作る物質、または体内に癌があることに反応して非癌細胞が作る物質で、それらを組織や体液、排泄物などで検出することが、癌の存在、種類、進行の程度を知る上で目印となるもの。この腫瘍マーカーは、癌スクリーニングや診断、治療経過のモニタリングに使用されているが、一部の腫瘍マーカーは、良性疾患や喫煙といった生活習慣で測定値が上昇することもあり、臨床の現場では、複数の腫瘍マーカーを併用することで総合的に判断している。

腫瘍マーカーのひとつ「CYFRA」は、血液検査名称「cytokeratin 19 fragment(サイトケラチン19フラグメント)」といい、肺がんの診断に使用されている。

肺がんはおもに、「小細胞がん」と「非小細胞がん」の2つに分けられるが、CYFRAは非小細胞がんの陽性率が高く、そのなかでも特に「肺扁平(へんぺい)上皮がん」で早期から陽性を示す。皮膚は、表皮・真皮・皮下組織の3層構造を形成しており、このうち表皮にある表皮角化細胞が悪性に増殖してできるがんを扁平上皮がんという。そのほか大細胞がん、肺腺がんにも高い陽性率を示す。

「腫瘍マーカーCYFRAが高い」=「肺がん」なのか?

CYFRAは、扁平上皮がんがある場合に陽性を示すため、肺のがんである肺扁平上皮がんや、大細胞がん、肺腺がん以外にも、卵巣がん、子宮頸部扁平上皮がん、子宮がん(子宮体がん)などでも高値を示すことがある。そのため、CYFRAが高値だからといって必ずしも肺がんであるとは限らない。しかし、CYFRAは扁平上皮がんでは高値を示すが、良性疾患では低値を示すため、肺がんが疑われる患者の補助診断やがんの再発を調べる検査に用いられる。

腫瘍マーカー「CYFRA」が高かった場合に実施する精密検査

非小細胞がんが疑われる場合は、精密検査に進む。例えば、喀痰(かくたん)細胞診や胸部エックス線検査が行われる。

喀痰細胞診とは、痰のなかの病的な成分や組織を調べる検査で、おもに肺の入り口である肺門のがんを調べる。検査方法は、起床時に深呼吸とともに大きな咳をして痰を採取し、痰の状態を調べる。また、胸部エックス線検査では、肺門部やその近傍に腫瘤影が確認できる。いずれにせよ、1つの検査だけで確定診断を下すことは難しいため、適切な検査を必要に応じて組み合わせていく。

血液検査を行って、CYFRAの値が基準値よりも高かった場合は、肺がんの一種である非小細胞がんが疑われる。けれども上述した通り、血液検査の特異性というのは、それほど高いものではない。CYFRAが高値となっても、その他のがんや炎症性疾患が原因であることも十分あり得るのだ。そのため、血液検査はあくまで病変の有無を調べるスクリーニング検査として位置づけ、異常が認められたら精密検査を受けることが推奨される。

ただし、血液検査の結果、CYFRAが異常値を示しても、次に検査を受けた時には正常値を示すことが稀にある。これは血液検査の結果がさまざまな要因によって変動することがあるからだ。例えば、検査を受けた日の患者自身の体調や検査の実施方法など、血液検査の結果を変動させる要因は複数ある。そのため、血液検査の結果を絶対とは考えず、気になる結果が出た場合は、期間をあけて3回、4回と繰り返しチェックしていくケースもある。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部