2015.6.22

肝機能検査の結果を正しく理解するためのポイント

肝臓の病気が怖いワケ

肝臓
“沈黙の臓器”と呼ばれ、病気が進行しても気づきづらいのが肝臓。肝臓の病気は、アルコールや肥満などが原因で、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝から始まることが多いが、自覚症状がないため発見されにくい。気づかずに放置すれば、肝機能が低下して肝炎へと進んでしまう。肝炎の症状は、全身の倦怠感、黄疸、発熱などがあるが、これも体調不良として見過ごしてしまえば、次はさらに重症な肝硬変になる。この肝硬変も初期段階での自覚症状はなく、進行してはじめて、尿の色が濃くなる、むくみ、腹水(お腹の中に水が溜まり、お腹がポコッと出ることがある)などの症状が現れるが、さらに悪化すれば、肝臓がんのリスクが高まるのだ。

このように、気づいたときには重症化しているケースが少なくない。自覚症状はなくても、定期的に検査しておくことが大切だ。

血液検査の数値を読み解くカギ

肝臓を調べる検査はおもに、血液検査、超音波検査、病理学的検査(肝臓の一部を採取して顕微鏡で確認する)などがあるが、自覚症状がない場合は、人間ドックなどで行う血液検査で肝機能を調べるのが一般的だ。検査結果の数値でよく耳にするのは、γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー)という指標だが、ほかにも肝臓の状態を知るために、見るべき指標があるので紹介しよう。

おなじみ、γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー)

γ-GTPは肝臓や腎臓で作られる酵素で、肝細胞や胆管細胞、胆汁に存在する。過剰なアルコール摂取、肥満、薬などによってγ-GTPは大量に作られ、増えすぎたγ-GTPが肝臓から血液中に漏れ出すことで、数値が上昇する。もしくは肝臓内の胆汁の流れが滞ったり、胆管細胞が壊れたりしてもγ-GTPは血液に流れ出す。いずれの場合も肝機能が異常な状態だ。この数値が高い場合は、薬物性肝障害、慢性肝炎、脂肪肝、肝がん、肝硬変などの疑いがある。基準値は50U/L以下。100U/Lを超えたら必ず病院へ行き、詳しい検査をするべきだ。

脂肪肝の疑い高まるALT(GPT)、ALTの数値と複合的な判断が必要なAST(GOT)

ALTとASTはおもに肝細胞に存在している酵素であり、基準値は30U/L以下となる。これらの数値が高いとALTやASTが肝臓から漏れ出していることを意味しており、肝臓が何らかの障害を受けている、破壊されている状態にあると判断できる。

ALTの数値だけが高い場合は、肝臓に負担がかかっているサイン。アルコールや肥満、ストレスなどで肝臓を疲弊させていないか、今一度生活習慣を見直すべきかもしれない。放置したまま長期化すると肝硬変になる恐れがある。ASTは肝細胞のほか、心臓や腎臓などにも多く存在しているため、AST数値だけが高い場合は筋梗塞や筋肉疾患など、肝臓以外に病気が潜んでいる可能性がある。AST、ALTともに数値の上昇がみられる場合には、急性肝炎、脂肪肝、慢性肝炎などの肝臓疾患が疑われる。

難解だと思われがちな肝臓機能の検査結果も、噛み砕けばそうややこしいことはない。自身の肝臓の状態をしっかり把握できれば、生活習慣などを見直すきっかけになるだろう。

小坂 英和(こさか ひでかず)
この記事の監修ドクター
こさか内科・内視鏡内科 院長
医学博士(神戸大学)/日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化管学会 胃腸科専門医/日本リウマチ学会 リウマチ専門医/日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医・指導医

Colorda編集部