2015.8.17

検査だからこそわかる聴力の衰え! その裏には重病が潜んでいる場合も

視力と比べて自覚しにくい聴力の低下

聴力検査私たちは、視力の低下には敏感である。本が読みづらくなったり、看板や標識の文字が判別できなくなるなど、日常生活では視力の低下を自覚させられる場面が多々あるためだ。

一方、聴力はどうだろうか。会話の声が聴き取れなくなるなど、よほどのことがない限り、聴力の衰えを自覚することはない。けれども聴力は、視力と同じくらい重要な感覚であり、その衰えはできるだけ早く感知したいところだ。

そこで受けておきたいのが聴力検査である。聴力を検査するにはいくつか方法があるが、ここではオージオメーターを使用した聴力検査について解説する。

2つの音を聴き取る選別検査について

オージオメーターを使用した聴力検査には、1.000Hzと4.000Hzという2つの周波数を調べる方法がある。これは選別検査とも呼ばれ、検査結果は聴取可能か聴取不能で表される。ちなみにHz(ヘルツ)というのは周波数の単位、dB(デシベル)というのは、音の大きさの単位と考えてほしい。

選別検査では、1000Hzの30dBで、日常会話を聴き取る聴力があるかどうかを調べる。次に、4000Hzの40dBの音を聞いてもらって、高い音域を聴取できるかを調べる。この2つの聴き取り具合を見て、聴力に異常があるかを検査するのである。この選別検査における正常値は、1000Hzであれば30dBの音、4000Hzであれば40dBの音を聴き取れたかどうかということになる。音は、ヘッドホンを通して伝えられる。

聴力の衰えは耳だけでなく全身に原因があることも!

聴力検査で異常が表れた場合、聴覚を司る器官になんらかの疾患があることが疑われる。具体的には、中耳炎や内耳炎、耳下腺炎といった炎症性の異常や、加齢または薬剤による難聴などだ。

また、メニエール病を発症している場合でも、聴力が衰えるという症状が現れることがある。その他、聴力の衰えには、糖尿病や動脈硬化、それから脂質異常症などの全身疾患が関与していることもあり得る。もちろん、検査を受けた際にたまたま体調不良であったということも考えられる。また、ストレスも関係する。

そういったことから、聴力検査を受けて、好ましくない結果が出た場合は、再検査や精密検査を受けることが望ましい。そうすることで、聴力に異常が生じた原因を突き止めることが可能となる。同時に、治療を開始する足掛かりにもなることだろう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部