2015.8.3

効果が出る「糖質制限ダイエット」をするには、正しい知識を!

知らずしらずのうちに摂りすぎている糖質

糖質制限ダイエットよく耳にするようになった「糖質制限ダイエット」。その名のとおり糖質の摂取量を少なくするダイエットだが、ケーキやチョコレートなど甘いものを食べなければよいという意味ではない。糖質は、普段食べている食事に潜んでおり、とくに主食としている白米、うどん、そば、スパゲティなどに多く含まれる。例えば、ご飯1杯150gの糖質は56gで、砂糖14個分に相当する。また、ジャガイモやニンジンなど野菜のなかにも糖質の多いものがある。人気メニューのカレーライスは、具材やご飯、小麦粉を使ったルーなど、糖質が高い食材のオンパレードということだ。

糖質制限が必要なのは、こんなからくりがあるから!

体内でエネルギーとなる栄養素は「たんぱく質」「脂質」「糖質」。たんぱく質は、各器官で栄養となったあとに排出されるが、脂質と糖質は、消化しきれなかったものが体内に蓄積され脂肪となる。なかでも脂質は太る要素としてとらえられており、糖質1gが4kcalなのに対し、脂質は9kcalである。ならば、糖質ではなく脂質を制限したほうがよい気がするが、じつは、体内では余分な糖質のせいで脂肪がついてしまうというからくりが起こっている。

糖質が体内でブトウ糖となり血液内に入ると、血糖値が上昇する。すると、血糖値を下げるためにインスリンが分泌され、筋肉に糖が送り込まれる。しかし、筋肉が糖を受け入れる量には限界がある。筋肉が受け入れなかった糖を、最終的に受け入れるのが脂肪細胞だ。一見よい働きをしているように思えるが、そうではない。なぜなら、インスリンの分泌は、脂肪細胞の分解を抑制してしまうからだ。つまり、糖質を多く摂ることで多量のインスリンが分泌され、脂肪が分解されず蓄積されていくことになるのだ。

間違った糖質制限が引き起こすもの

糖質制限は、本来、糖尿病の食事療法として取り入れられてきたが、近年、ダイエット法として注目を集めている。しかしじつは、糖尿病患者が糖質制限を行うことについても、医師のあいだでは賛否両論があるほどのものなので、自己流で糖質制限や急激なダイエットをするのは厳禁だ。筋肉が落ちて基礎代謝が下がり、その状態を危機だと判断した脳が、消費エネルギーを抑えて体重維持の指令を出し、やせにくく太りやすい体質をつくってしまう。極端な糖質制限は、このような本末転倒な状態を引き起こす可能性がある。

さらに、無理な糖質制限により、肝臓に蓄えられるべき中性脂肪が不足すると、体中の中性脂肪をかき集めて肝臓に送る機能が働き、「低栄養性脂肪肝」を引き起こしてしまう。そのまま放っておくと、倦怠感や身体のだるさにつながる。つまり、糖質は摂りすぎても摂らなさすぎてもいけない。限りなくゼロを目指して制限するのではなく、無理のない程度に意識するようにしよう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部