2055年、アルツハイマー病の患者数は1億人超
アルツハイマー病は高齢期に物忘れで発症し、次第に学習機能や認知機能が低下し最終的には寝たきり状態に陥り介護が必要となる高齢期の脳の変性疾患で「ボケ」をもたらす代表的疾患だ。アルツハイマー病の早期発見は難しく、脳の変性病変は進行性で未だに治療法が確立されていない。全世界で3390万人と推定されるアルツハイマー病の患者数は、人口の高齢化に伴い40年後には約3倍に増加すると予測されている。
たかが生活習慣、されど生活習慣
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のデボラ・バーネス助教授とクリスティーネ・ヤッフェ教授はアルツハイマー病の発症要因のなかには、喫煙など修正可能な危険因子が多数あることに注目。修正可能な7つの因子の影響を減らすことにより、 相当数のアルツハイマー病の発症を予防できると推論した。
バーネス博士らが注目した危険因子は、1.喫煙、2.低身体活動、3.低教育水準、4.中年期高血圧、5.糖尿病、6.中年期肥満、7.うつの7つの危険因子だった。解析によって、7つのリスクを10~25%減らすことにより、現存の患者のうち110万~300万人(3%~9%)の発症予防が可能であると推測した。各因子別の発症予防数はリスクを25%減らすことにより、低教育水準(136万人)、次いで喫煙(100万人)、運動不足(100万人)、うつ(83万人)、中年期高血圧(40万人)、糖尿病(20万人)、中年期肥満(16万人)と続いた。
同助教授らは、アルツハイマー病の治療薬はまだ研究途上であるが、これらの危険因子を減らす様々な取り組みによりアルツハイマー病の予防に劇的な効果が期待できると予防によるアプローチを強調した。アルツハイマー病が生活習慣病と呼ばれる日がくるかもしれない。