2015.8.20

治療のカギは運動と食事! 糖尿病の診断基準と治療の流れ

食事の前後で血糖を調べることが基本

糖尿病検査糖尿病検査では、空腹時血糖と食後血糖を見る検査をあわせて行う。専門的には、空腹時血糖検査と経口糖負荷検査と呼ばれるものだ。

空腹時血糖検査は、文字通り食事をしていない状態で、血液中にどれだけのブドウ糖が含まれているかを検査する。空腹時血糖値(mg/dl)の正常値は以下の通りである。

正常 < 110
境界値 110 ~ 125
糖尿病 126 ≦

経口糖負荷検査とは、糖分を摂取した状態で受けるもので、75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)と呼ばれる検査法が主流となっている。75gOGTTは、10時間以上の絶食の後、朝食前に75gグルコースを含む溶液を服用させる試験。空腹時と負荷後30〜60分おきに採血して血糖値を測定する(空腹時と2時間値の測定は必須)。負荷を与えた60分値が180mg/dL以上だった場合、糖尿病に発展しやすい状態といえる。

過去の血糖値の状態も参考にする

先述の空腹時血糖検査と経口糖負荷検査は、今現在の血糖値を測定する検査だが、糖尿病を診断する際、過去の血糖値の状態もチェックする必要がある。それには、HbA1c(グリコヘモグロビンA1c)とフルクトサミンという物質について調べる。

HbA1cの値を見れば、過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均がわかる。HbA1cが6.5%以上の場合は、糖尿病の可能性が強く疑われる。一方、フルクトサミンの値は、過去2週間前後の血糖値の平均がわかり、正常値は205~280μmol/lとなっている。この2つも、血液検査によって調べることができる。

そのほか、糖尿病の検査ではインスリン抵抗性指数(HOMA-R)に着目しよう。インスリン抵抗性とは、適切な量のインスリンが産生されているにも関わらず、正常に働いていない状態を指す。そのためこの値が高いと、結果的に糖尿病の発症リスクも高まることになる。そんなインスリン抵抗性指数は、次の式で導き出すことができる。

インスリン抵抗指数=空腹時インスリン(mg/dL)×空腹時血糖(μU/mL)/405

この値が1.73以下であれば、正常と判断できる。1.73を超える場合、インスリン抵抗性があると判断される。では、こういった現在と過去の血糖値の状態を調べ、糖尿病という病気が発覚した場合は、どういった対処をすることになるのだろうか。

薬剤を服用する前に運動と食事で改善!

糖尿病と診断された時点から、糖尿病治療が始まる。治療と聞くと、薬物療法や外科処置を思う浮かべがちだが、糖尿病は少し特殊である。糖尿病による合併症を防ぐために、運動・食事、そして薬物療法によって血糖値のコントロールを行う。

運動によって糖が消費される。また、筋肉量を増やすことで、筋組織に貯留される糖分が増加する。さらに、運動による脂肪減少により、血糖値を下げるインスリンが効果を発揮しやすい環境が作られる。その結果、血糖値が低下していく。

食事は糖尿病治療で最も重要なパート。食事により、糖が体に取り込まれるため、摂取する糖分やエネルギーのバランスを管理できれば、そのまま血糖値の改善へとつながっていくのだ。

糖尿病を発症したら、こうした運動療法と食事療法を医師の指導のもと、地道に進めていくことが求められる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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Colorda編集部