日本における不妊治療の現状
日本人は、不妊治療に対する関心が非常に高い。それは不妊治療を実施している医療施設の数や、体外受精の年間件数の多さを見ても明らかである。日本産科婦人科学会によって2012年度に報告された体外受精の実施件数は、治療が開始されてからの累計で24万件にも及んでいる(※)。
こうした不妊治療を受けている多くは、30~40代の女性である。卵巣機能というのは、年齢が高まるにつれてその機能が低下していく。当然ではあるが、卵巣機能が低下すれば、妊娠する確率も低下していく。そのため、年齢を重ねてからの出産を望めば、不妊治療の必要性はおのずと高まっていくといえる。
そうした点も踏まえたうえで、妊娠と向き合い、まずは自身の卵巣機能を調べることが大切といえる。女性ホルモン検査を受けることで、自分の身体が妊娠に適した状態にあるかどうかを知ることが可能だ。
検査では3つのホルモンに注目する
女性ホルモン検査では、血液中の女性ホルモンの値を調べる。対象となるのは、FSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)、E2(エラストラジオール)といった3つの女性ホルモンだ。これらのホルモンの値を見ることで、卵巣機能を調べることができる。
ただ、一般的な血液検査の項目とは異なり、女性ホルモンは妊娠中や閉経後、それから月経周期によって大きく変動する。そのため、基準値も時期に応じて細分化されているため、個々のホルモンについて個別に見ていく必要がある。
E2の異常値は無排卵や無月経のサイン
E2はエストロゲンの一種で、卵胞ホルモンとも呼ばれている。生殖器を発育させたり、子宮内膜を肥厚させたりする作用がある。また、卵胞がどれだけ成熟しているかの指標にもなる。E2の基準値は次の通りだ。
●月経周期
卵胞期前期:11~82pg/ml
卵胞期後期:52~230 pg/ml
排卵期:120~390 pg/ml
黄体期:9~230 pg/ml
●妊娠中
妊娠前期:2300~7400 pg/ml
妊娠中期:9700~18400 pg/ml
妊娠後期:16500~32400 pg/ml
●閉経後:22 pg/m以下
E2が基準値よりも低いと、卵巣機能が低下していることを意味する。つまり、無排卵や無月経という症状のほかに、更年期に入ったことを示唆することもある。E2が基準値よりも高いと、卵巣機能は高まっているものの、エストロゲン産生腫瘍などの病気が疑われる。
LHとFSHは卵巣から離れた場所で卵胞を発育させる
LHは脳下垂体で分泌されるホルモンである。卵巣で卵胞を成熟させたり、排卵を促進させたりしたあとに、黄体を刺激するといった作用を持っている。LHの基準値は次の通りである。
●月経周期
卵胞期:2.3~16.9mIU/ml
排卵期:2.9~51.3 mIU/ml
黄体期:0.9~19.4 mIU/ml
●閉経後:87.4 mIU/ml以下
LHが基準値よりも低いと、下垂体機能低下症や排卵障害が疑われる。逆に基準値よりも高いと、卵巣性無月経が疑われる。卵巣性無月経とは、卵巣に原因がある排卵障害である。
FSHもFHと同じく、脳下垂体で分泌されるホルモンである。卵巣において、卵胞の発育を促進するという作用を持つ。FSHの基準値は次の通りである。
●月経周期
卵胞期:3.0~14.7mIU/ml
排卵期:3.2~16.6 mIU/ml
黄体期:1.5~8.5 mIU/ml
●閉経後:157.8 mIU/ml以下
FSHはFHと同様、基準値よりも低いと下垂体機能低下症が、基準値よりも高いと卵巣性無月経が疑われる。
以上のように、女性ホルモン検査を受けることで、脳の状態から排卵や月経に関する異常まで、たくさんの情報を得ることができる。正常な妊娠をするうえで有益な情報ばかりなので、検査を受けるメリットは非常に大きいといえる。
※日本産科婦人科学会 平成22年実績
