2015.10.29

C型肝炎に「特効薬」誕生!

100人に1人以上がC型肝炎キャリア

C型肝炎新薬C型肝炎とはC型肝炎ウイルス(HCV)の感染により起こる肝臓の病気だ。HCVに感染すると約70%の人が持続感染者となり、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと進行する。

HCVは1型、2型に分類される。日本では1型が70%で2型が残りの30%だ。厚生労働省によると患者数は推定約37万人、キャリア数は推定約190~230万人となっている。これは人口の1.4~1.7%という数字で、100人中1~2人はC型肝炎に感染している計算となる。

100%の臨床結果が出た新薬とは!?

C型肝炎の治療といえば、インターフェロン治療だ。インターフェロンとはウイルスやがん細胞の増殖を防ぐタンパク質で、免疫や炎症を調整する効果が期待できる。治癒率は70%であり高水準と言える一方、全身の倦怠感や食欲不振、うつなどの副作用が表れる。重度の副作用から仕事を休まざるをえない患者も多い。
2011年11月に保険収載された3剤併用療法(ペグインターフェロン・リバビリン及びシメプレビル又はテラプレビル)により、難治性のC型慢性肝炎が70%以上の治癒率となっている。治癒率が5割も満たないというのは、少し情報が古いと思われる。

そんななか、2015年9月1日、抗インフルエンザ薬「タミフル」開発でも知られる、ギリアド・サイエンシズ社が開発した「ハーボニー」という新薬が国内で販売開始された。

国内の臨床試験では、1型の患者157人が12週間飲み続けた結果、すべての人の原因ウイルスが消えたという画期的な新薬だ。ちなみに12週間は従来の治療の半分以下だ。

また、同社から出ている新薬「ソバルディ」は2型患者に有効。国内の臨床試験では患者の96%が治癒するという結果が出ており、2015年3月に承認され、5月25日から販売開始されている。いずれの薬もインターフェロンを使わない経口薬で、副作用は、風邪症状、胃腸症状、皮膚症状など軽微なものだ。

医療費助成で手の届く薬に

2016年4月1日に改定された薬価基準では、ハーボニーは1錠54,797円、ソバルディは42,240円。効き目の高さなどが評価された結果であり、これでも当初より37.1%引き下げられた価格だ。12週間服用すれば、治癒までに要する薬剤費はハーボニーが約460万、ソバルディが約355万。インターフェロンを使った治療の薬剤費は約223万円なので、1.5~2倍に相当する。

薬剤価格が高額なため、厚生労働省は2015年5月にソバルディを、同8月27日にハーボニーを助成制度の対象とすることを決定。患者の自己負担は月に1 万円もしくは2万円(納税額による)に抑えられ、12週間の患者負担額は最大でも8万円になる。これにより、より多くの患者が治療でき、将来的にC型肝炎が原因の肝硬変や肝がんが激減する見込みだ。

インターフェロンフリーの新薬ラッシュが続く!

ハーボニーやソバルディだけではない。C型肝炎の医療現場は新薬ラッシュだ。アッヴィ合同会社は1型2型両方に効果のある新薬を開発中だ。27国で臨床試験を行ったところ、95~100%が治癒し、効果が期待されている。現在日本国内での承認を申請中だ。

また、メルク株式会社も新薬を開発し、アメリカで臨床試験を行った。過去に治療を受けていなかった患者に12週間投与したところ、95%の患者に効果が出たことを受けて、日本でも臨床試験を進めている段階だ。

いずれも従来のインターフェロンを使用しない治療に向かっている。インターフェロンを使った治療より効果が高く、副作用は軽微なものになっている。インターフェロンで治療結果が出なかった患者や、高齢者などが、肝がんに怯えずにすむ、希望の光が見えてきたといえるだろう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部