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2017.2.9

Vol.5 肉好き女子必見! 結腸がんのリスクが高まる食生活とは【ケーススタディBさん】

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Bさん(28歳女性、世田谷区在住)
家族:独身、ひとり暮らし
職業:会社員(渋谷のIT系企業勤務)

【生活】
●社内のフットサルサークルやアウトドアサークルに参加、フェスも大好き
●仕事もプライベートも全力。平日の夜は女子会や合コン、残業で、ほぼ眠るために帰る生活
●不規則な生理が目下の気がかり
●最近、友人と飲むと、飲みすぎて記憶をなくしてしまう

【健診】
会社の健康診断では異常なし。子宮がん検査は次回こそ健診にプラスして受けようと毎回思って実現に至らず。

【食事】
●肉と野菜と飲み歩きが好き
●週1~2回の自炊と、休日のカフェランチで栄養バランスをとっているつもり

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■健康診断ではここを見よう!
クレアチニン、尿酸、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール

■プラスアルファで受けたい検査はコレ!
●子宮頸がん検査
●乳がん検査(エコーがおすすめ)
●子宮および卵巣のMRI検査
●(30歳を目安に)大腸CT

野菜を摂っているからといって、食べた肉が相殺されるわけではない

肉、つまり動物タンパク質の摂りすぎは、腎臓に負荷がかかります。ここで見ておきたいのが、腎機能を判断する際の項目「クレアチニン」。タンパク質は炭水化物や脂質のように身体に蓄えることができず、過剰分はアミノ酸に分解され、さらにエネルギーとして利用されます。その際、アミノ酸の一部は有毒なアンモニアに変化、肝臓で無毒な尿素に変えられ、腎臓から尿として排出されます。そのため、タンパク質を過剰に摂取し続けると、腎臓は常に尿素の排泄をしなければならない状態となり、腎臓にかかる負担が大きくなってしまうというわけなのです。なお、クレアチニンは、運動をしている人の場合、数値が高い傾向にあります。自分のベースを知ったうえで、比較をしましょう。

ほかに、肉好きの方が見ておきたい項目として、「尿酸」、「中性脂肪」、「HDLコレステロール」、「LDLコレステロール」が挙げられます。タンパク質は「動物性タンパク質」と「植物性タンパク質」に分けられます。動物性タンパク質はプリン体や動物脂肪を含んでいるため、摂り過ぎると、動脈硬化や痛風になってしまう恐れがあります。「20代女性で通風?」と思うなかれ、罹患率は低いものの、20代女性でも通風になることがあるのです。さらには、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や飽和脂肪酸などの摂りすぎで生活習慣病になる可能性も。野菜を摂っていることに関係なく、肉の摂りすぎには注意が必要です。

・バランスの取れた食生活を!
高血圧症、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病全般の検査可能なプラン一覧はこちら>

動物性タンパク質と植物性タンパク質、どのくらいの割合がベスト?

とはいえ、タンパク質は身体にとって重要です。摂りすぎはNGですが、日々の食事でほかの栄養素と同じように摂取したい栄養素です。ここでちょっと、動物性タンパク質と植物性タンパク質のお話をしておきましょう。

タンパク質はアミノ酸が結合してできています。食物のタンパク質は消化されてアミノ酸に分解され、それを材料に身体に必要なタンパク質がつくられます。ところがタンパク質合成に必要な約20種のアミノ酸のうち9種は体内で作ることができないか、または十分につくれないため、食べ物から摂らなくてはいけません。これらを必須アミノ酸といいます。動物性と植物性タンパク質の最大の違いは、この必須アミノ酸のバランスにあります。動物性タンパク質は必須アミノ酸をバランスよく含んでいるため、タンパク質の材料をしっかり補給できますが、植物性タンパク質は一部の必須アミノ酸が不足しているのです。

タンパク質摂取量のうち動物性タンパク質で摂る比率が30%以下になると、アミノ酸バランスが崩れやすいといわれています。アミノ酸バランスがくずれることで起こるのは、女性にわかりやすいところでは肌荒れですが、体力や免疫力の低下、ホルモンバランスの悪化など、日常生活を送るうえで大切な要素に影響が出る可能性があります。動物性タンパク質と植物性タンパク質の摂取割合は50%ずつ、つまり半々になるように摂るとよいと思います。

研究結果でみる、“肉好き女子”の結腸がんリスク

もうひとつ、肉好きな女性に知っておいてほしいことがあります。それは、「結腸がん」になりやすいとの報告があること。国立がんセンターの調査によると、女性の場合、赤肉の摂取量が1日80g以上(調理前の重量)の人は1日25g未満の人よりも、結腸がんになる可能性が45%高まるとか。

女性の死因の第1位は大腸がんです。魚や肉に含まれる動物性タンパク質は消化し辛く、長時間滞留すると、腸内で腐敗し、悪玉菌が繁殖し、大腸がんの原因につながっていると言われています。今はまだよいと思いますが、30歳や35歳の節目で1回、40歳以降は3年に一度、大腸CTなどの検査を検討しましょう。

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次回健診では必ず受けよう、“女性特有の疾患”の検査

女性のがん罹患率は、男性より早く増え、20代で男性の約1.6倍、30代では男性の約2.3倍といわれています。その要因は「子宮頸がん」です。子宮頸がんは、性体験のある女性の8割近くが感染経験をもつ「ヒトパピローマ・ウイルス(HPV)」が原因で、そのごく一部のケースで子宮頸がんを発症します。最近は初体験年齢が下がっているため、若い女性の罹患が増えています。子宮頸がんの検査は、20代以降、2年に1回のペースで受けることが推奨されています。

IT系でデスクワークの多い女性にはこんなデータもあります。スウェーデンの研究チームが、25~64歳のスウェーデン人女性29,000人を下記のような3群にわけて25年にわたって追跡し、その膨大なデータを分析しました。

  • A群:デスクワークで、とくに運動をしていない
  • B群:デスクワークで、自主的にランニングなどの運動を行っている
  • C群:立ち仕事や体を動かす仕事で、自主的な運動も行っている

結果、A群の女性のほうが、C群の女性に比べて子宮体がん(子宮内膜がん)にかかった確率が2.4倍も高く、また閉経前に乳がんと診断される確率も同じく2.4倍高いという結果になりました。定期的な乳がん検査(Vol.3参照)をおすすめします。

また、不規則な生理は子宮や卵巣の病気の可能性もあります。成人女性の4人に1人は子宮筋腫があると言われていますので、一度、MRI検査で子宮、卵巣の病気のチェックをしてみてはいかがでしょうか。

・子宮頚がんの検査可能な医療施設をお探しの方はこちら>
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酔って記憶をなくす人は、「若年性認知症」に要注意

ちなみに、酔って記憶をなくす人は「若年性認知症」になるリスクが高まると言われています。過度な飲酒により、短期的な記憶をなくす“ブラックアウト”が原因のひとつではないかと考えられており、記憶をなくすのは、脳の海馬(かいば)がダメージを食らうから。これを繰り返していると海馬が「回復」できなくなるということらしいです。今できる検査はありませんが、水をこまめに飲み、お酒の飲み方には注意しましょうね。


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Colorda編集部