2016.1.4

牡蠣にあたらないようにするには?

栄養価が高くおいしい反面、食中毒の危険性も高い牡蠣

牡蠣秋から冬にかけて、旬の食材のひとつである牡蠣。フライや鍋、グラタン、シチューの具材など用途も多いが、やはり牡蠣は生がおいしいという人もいるだろう。しかし、牡蠣はおいしく栄養価が高い反面、ウイルス性の食中毒を起こす可能性も高い。そのため、ほかの食材に比べてあたったことがあるという人が多く、危険と背中合わせにある食べ物といえる。激しい下痢や嘔吐を引き起こすため、あたったことがある人は、もう二度とあたりたくないと思っているはずだが、実際、牡蠣にあたらないようにするにはどうすればよいのか。

牡蠣にあたらないようにする方法はあるのか?

牡蠣の食中毒の大半は、ノロウイルスによる。人間が排出し下水処理場で処理しきれずわずかに残ったノロウイルスが、川を下って海に流れ込む。牡蠣は、大量の海水を飲み込み、中にいるプランクトンを食べて生きているため、海水中のノロウイルスが少しずつ牡蠣の内臓に蓄積される。火を通さずに食べると、ヒトの細胞内でのみ増殖するノロウイルスが小腸内で暴れ出し、これが食中毒の症状として出るのだ。しかし、ノロウイルスは85℃以上で少なくとも90秒間加熱すると、感染性が失活するとされている。沸騰したお湯で1~2分程度ゆでる、または、フライの場合は180℃前後の油で4分以上揚げると、食中毒の発生率を減らすことができる。どうしでも生で食べたいが、食中毒になるのも避けたいという場合は、ウイルスが混入している内臓を取り除いで食べるようにするしかない。それでも絶対にあたらないというわけではなく、可能性をゼロにするのは難しい。

ノロウイルスとそれ以外の食中毒の違い

ノロウイルス以外の食中毒は、大きくわけると「細菌性」と「ウイルス性」がある。細菌性は、食品中の細菌を食べてしまうことで発生し、おもに経口感染だ。ウイルス性の場合は、ウイルスが付着しているものを食べたり、手についたウイルスが体内に入ってしまったりすることで感染する。細菌性との違いは、嘔吐物や便に触れたり、飛沫ウイルスを吸い込んだりしても感染するため、経口感染だけではなく、飛沫感染や接触感染もある点だ。症状は、細菌性、ウイルス性ともに嘔吐や吐き気、下痢や腹痛、発熱で、変わりはない。

絶対にあたらない保証はない牡蠣。対策としては、生で食べることを避けるほかない。翌日の仕事や予定次第では、牡蠣を食べないほうがよさそうだ。しかし、栄養価も高くおいしいので、食べる日を選んだり、火を通したりすることで、これからも楽しく味わいたいものだ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部