2016.1.18

風邪は誰かにうつせば治るってホント?

噂は真実か? 迷信か?

S風邪ThinkstockPhotos-462450989昔からよく「風邪はうつすと治る」と言われているが、果たして本当にそうなのか。医学的根拠はあるのだろうか。たしかに自分が風邪をひいた後に、まわりの誰かが風邪をひき、「自分が風邪をうつしてしまったのかも?」と、申し訳なく思うころには、当の本人は回復しているという経験をしたことある人もいるだろう。

しかし、結論をいうと、誰かに風邪をうつすことで自分の風邪が治るという話に、医学的根拠はなく、迷信に過ぎない。ただ、風邪の仕組みを考えると、なぜそのような迷信が生まれたのかがわかる。まずは、風邪とはどういうものなのか、改めて見てみることにしよう。

改めて知る風邪の正体

風邪とは、ウィルスが鼻や喉の粘膜に入り炎症を起こすことで、鼻水や咳、くしゃみがでたり熱がでたりする病気だ。正式名称は「感冒」や「急性上気道炎」と言い、医学的には「風邪症候群」と言われている。身体が冷えたり乾燥していたりすると風邪をひくと思いがちだが、これらのことが原因で風邪の症状がでるのではなく、あくまでもウィルスが身体に入りこまなければ風邪をひくことはない。そこで侵入してきたウィルスと戦うためには、免疫力が必要となる。どのようなウィルスなのかを分析し、攻撃法を講じてやっつけていくと、徐々にウィルスが減り風邪が治るのだ。

誰かにうつしたことで治るように思えるからくり

こうして風邪のウィルスは身体の中で死んでいくので、ウィルスの力だけでは、誰かの身体にすみかを移すことなどできない。咳やくしゃみで空気中に出たウィルスを吸い込んでしまうか、または接触によって侵入してしまうかで、別の人の体内に入った少量のウィルスが増殖する。潜伏期間は3~7日なので、ちょうど、先にひいた人が治るころに次の人の症状があらわれることになり、あたかもウィルスを人に押し付けて風邪をうつしたことで、治ったように感じる。この状況から、昔の人が「風邪をうつすと治る」と言ったのが、現在まで伝わってきているようだ。

そのほか、「風邪は万病の元」という昔からの言い伝えがある。単なる風邪だと思って安静にせずに無理をすると、悪化して長引いたり、あるいは、肺炎、髄膜炎(ずいまくえん)や腎盂炎(じんうえん)、中耳炎などの合併症を引き起こしたりすることもある。風邪かなと思ったら、状況の許す限り早めに、しっかり睡眠をとって休むように心がけたい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部