2016.5.30

たかが手汗? いいえ、実は身体の危険なサイン

もしかして手だけたくさんの汗をかいていない!?

Man hand in white background「手に汗握る」という言葉があるように、緊張したり興奮したりすると手に汗をかくことがある。このように手汗の原因は、精神的なものだと考えられているが、生活に支障をきたすほどの手汗に悩まされている人も少なくないようだ。もし、身体のほかの部位に比べ、手に多くの汗をかいているようであれば、「手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)」という病気が疑われる。体質的にあまり汗をかかない人もいれば、汗っかきの人もいる。手汗の量も人それぞれで、手のひらが汗で湿る程度から水滴がつく程度、さらには水滴がポタポタと垂れるほどの状態になる場合も。「手を動かしたら汗が飛び散ってしまう」「本が濡れてしまう」「握手ができない」「手が滑ってものを落としやすい」となど、日常生活に様々な支障が生じてしまう。原因は明らかにされてはいないが、交感神経が過敏になっているためだと考えられている。また、手掌多汗症になる人は、小さい頃から手汗の量が多い傾向にあるようだ。

手汗は病気のサインかもしれない

もし、手だけではなく全身に多くの汗をかくようであれば、「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)」「褐色細胞腫」「更年期障害」などの病気にかかっているサインかもしれない。これらの病気が原因である場合は、手のひらを含め、あるとき急に汗の量が増える。また、ストレスや過労が原因で自律神経失調症になり、身体のほてりや微熱によって汗をかきやすくなることがある。手汗がひどいと感じたら、手のひらだけなのか、それとも全身なのかを見極める必要があるだろう。

生活に支障をきたす手汗はどうすれば治る?

生活に支障をきたすほどの手汗をかく場合はもちろんのこと、気になるときは早めに専門医を受診しよう。手掌多汗症にはいくつかの治療法がある。

まず、汗線をふさぐ作用のある「塩化アルミニウム水溶液」を、夜寝る前に塗る方法だ。手袋をする密閉療法がより効果的。治療費が安く、自宅でも簡単にできる治療だが、塩化アルミニウムは刺激が強いため皮膚炎を起こすリスクがある。

次に、「ボツリヌス毒素注射法」といい、手のひらに注射をして神経をブロックする治療法。1回の注射で3~6ヶ月効果が持続するが、保険適用外であるため治療費が高くつく。また、微弱な電流を流した水に20分ほど手をつけて汗腺にダメージを与える「イオントフォレーシス」という治療法もある。比較的治療費も安く身体への負担も少ない治療だが、定期的に通院する必要がある。

手汗の原因は、自律神経の乱れと大きく関わっていることが多い。規則正しい生活をすることで交感神経と副交感神経のバランスがとれ、手汗が改善されることがある。やはり基本は、睡眠、食事、適度な運動を心がけることが大事だ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部