2017.3.13

膨張剤は身体に害? 食品添加物の真実

膨張剤の目的と役割

「膨張剤」とは、ケーキや焼き菓子、蒸し菓子、まんじゅうなどの生地をふっくらと膨らませるために使用する食品添加物である。「ベーキングパウダー」や「ふくらし粉」とも呼ばれ、こちらのほうがなじみのある人も多いだろう。

膨張剤から炭酸ガスやアンモニアガスを発生させ、食品を膨らませる仕組みだ。酸性の助剤やアルカリ性のガス発生剤が配合されており、食品の素材や目的によって配合が調整される。低温で大量のガスを発生する即効性のもの、高温になってからガスを発生する遅効性のもの、長時間の加熱に耐えられる持続性のものがある。

食品によく使われている膨張剤

食品によく使われている代表的な膨張剤をふたつ紹介する。

炭酸水素ナトリウム

「重曹」としてよく知られている膨張剤。大量摂取すると体内の塩分が増え、血圧上昇やむくみを生じる場合があるが、食品に含まれている程度であれば問題はない。

  • 使用食品:ホットケーキ、焼き菓子、まんじゅうなど

硫酸アルミニウムカリウム

「ミョウバン」として知られている膨張剤で、炭酸水素ナトリウムと一緒に使われ、ガス発生を持続させることができる。タンパク質を凝固させる性質があることから、味噌への使用が禁止されている。微量摂取であれば、安全性に問題はない。

  • 使用食品:ビスケット、クッキーなどの焼き菓子、スポンジケーキなど

アルミ入りベーキングパウダーの危険性

アルミニウム入りのベーキングパウダーを使ったホットケーキや焼き菓子を幼児が食べた場合、アルミニウムの摂りすぎになることを東京都健康安全研究センターが指摘している。市販のあるホットケーキミックス粉には、1g当たり最大0.53mgのアルミニウムが含まれており、約50gの粉を使ってホットケーキ1枚を焼いた場合、約27mgアルミニウムが含まれる計算になる。

世界保健機構(WHO)の規定によると、アルミニウム1日の摂取量は体重1kg当たり1mg。体重15kgの幼児では15mgになり、ホットケーキ1枚を食べると1日の規定摂取量をゆうに超えてしまう。動物実験では神経や生殖器に影響があることがわかっているが、人体への影響については明らかにされておらず、問題視された認知症との関連性も否定されている。しかし、規定量を超えてまで食べることは望ましくない。

菓子類をおいしくするために必要な膨張剤。微量であれば安全性に問題はないとされているものの、できれば「アルミフリー」「ミョウバン不使用」などの記載があるものを選択するようにしたい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部