2015.5.21

認知症とアルツハイマー、その違いを知っておこう

認知症の中で最も多い「アルツハイマー型認知症」

アルツハイマー、認知症ともすると同じ意味に捉えてしまいそうな「認知症」と「アルツハイマー病」。厚生労働省によれば、認知症の有病者は2012年時点で462万人。2025年には推定で700万人に上り、予防と早期診断が重要視されている。ここで、双方について改めて見てみよう。

認知症とは、一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に師匠をきたすようになった状態をいう。ICD-10(国際疾病分類10版)による認知症の定義は、「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶・思考・見当識・理解・計算・学習・言語・判断等多数の高次脳機能の障害からなる症候群」だ。

かつては「痴呆」、「ボケ」といわれていたが、2004年12月に厚生労働省が「痴呆(症)」という言葉の使用を止め、「認知症」と改めた。アルツハイマー病は認知症のうちのひとつで、「アルツハイマー型認知症」という。さらに、罹患年齢65歳以上の老年性と、65歳以下の若年性に分けられる。2012年の日本神経学会で発表された調査では、認知症の約67.4%を「アルツハイマー型認知症」が占めると報告されている。

代表的な認知症4つと主な症状

「アルツハイマー病」

物忘れから始まる場合が多く、段取りが取れない、気候に合った服が選択できない、など。
脳の委縮と、脳の神経細胞にタンパク質がたまることにより引き起こされる。発症するまでは気づきにくい。

近時記憶障害で発症することが圧倒的に多い。失語・失行・失認・遂行機能障害のうちひとつ以上の認知障害が認められ、穏やかな発症と持続的な認知機能の低下をきたす。さらに、感情や意欲の障害、妄想、幻覚、徘徊、興奮等の精神症状や行動症状を伴うことが多い。また、神経細胞の変性消失とそれに伴う大脳萎縮、老人斑の多発、神経原繊維変化の多発が特徴だ。

「脳血管性認知症」

アルツハイマーに次いで、発症が多い。脳梗塞や脳出血、脳動脈硬化などにより、一部の神経細胞が死んだり、神経ネットワークが壊れたりする。記憶障害や言語障害などに現れやすく、アルツハイマーより歩行障害が早く出ることが多い。

「まだら認知症」とも言われる。認知機能障害はまだら状で記憶力や知的能力の低下があるが、病識や判断力は比較的よく保たれる。

「レビー小体型認知症」

幻視や筋肉のこわばり(パーキンソン症状)などの症状がみられる。

正常な社会及び職業活動を妨げる進行性の認知機能低下として定義される認知症。記銘や保持に比べて、想起の障害が目立つ。繰り返し現れる幻視はもっとも特徴的な症状のひとつ。注意や覚醒レベルの顕著な変動を伴う動揺性の認知機能や、パーキンソニズム(寡動や対称性の筋固縮がおもな症状)も認められる。

「前頭側頭型認知症」

会話中に突然立ち去る、万引き、同じ行為を繰り返すなど、性格変化や社会性の欠如が出やすい。

前頭葉や側頭葉にタンパク質が蓄積し、組織が萎縮することで、行動を抑制する部分が傷つくことで発症する認知症。もともと、ピック病と呼ばれていた。初期の段階では、認知機能は比較的保たれており、パーソナリティと行動の変化が特徴的だ。

対策は、生活習慣の見直しと早期発見

「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」は、生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂血症)との関連が指摘されている。喫煙・飲酒、ストレス・うつ病などもリスクを高める危険因子だという。食生活では、野菜・果物・不飽和脂肪酸のDHAを含む魚介類をバランスよく摂取し、よく噛むことが大切。生活全般では、運動習慣をもつ、前向きで意欲的な気持ちで過ごす、脳や手先を使って神経間の結合を強めるなどがあげられる。気になる症状は、医療機関の「もの忘れ外来」での受診をお勧めする。早く治療すれば、進行を遅らせたり治ったりする認知症もあるので、まずは診断を受けるのが不可欠。メタボ対策とともに、40代前後からの注意が早すぎるわけではない。 

自分や家族の誰かが、アルツハイマーを含む認知症になった場合は、さまざまな負担がかかってくる。予防と早期発見のために、認知症のリスクを回避するライフスタイルを考えよう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部