2017.2.6

酸化防止剤は身体に害? 食品添加物の真実

酸化防止剤の目的と役割

S_shutterstock_305525693「酸化防止剤」とは、自らが酸化することでほかの食品そのものの酸化を防ぐ食品添加物である。水溶性と脂溶性に大別され、食品の素材によって使い分けられている。

役割のひとつ目は、油脂食品類の酸化による色や風味の劣化を防ぐこと。ふたつ目は、果実加工品や漬物の変色・褐色化を防ぐこと。3つ目は、有害な過酸化物や発がん物質の生成を防ぐこと。酸化された食品は栄養価が落ちるほか、過酸化物を口にすると消化器障害や食中毒を引き起こす可能性があるため酸化防止剤が使用されているのだ。

食品によく使われている酸化防止剤

食品によく使われている酸化防止剤3つを紹介する。

L-アスコルビン酸(ビタミンC、V.C)

水に溶けやすく、変色、褐変、風味の劣化などを防ぐ。食品中で酸化することで品質改良剤の役割を果たし、また、ビタミンCとして栄養強化剤の効果もある。原料に遺伝子組換のジャガイモやトウモロコシを使用していることが問題視される場合があるが、基本的には含有量は少ないため、すぐに人体への影響はないと考えられている。

  • 使用食品:果実加工品、漬物、缶詰、パン、そう菜など

ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)

化学合成により作られる脂溶性の酸化防止剤。安定した酸化防止効果を発揮する反面、発がん性を持つことが指摘されている。またBHTは、カップ麺の容器などに安定剤として使われており、パッケージ類からBHTが食材へうつる点が懸念されている。

  • 使用食品:油脂、バター、魚介乾製品、魚介冷凍品、魚介塩蔵品など

亜硫酸ナトリウム (亜硫酸ソーダ)

水に溶けやすく、酸化、褐色を防止するほか、漂白効果もある。古くから硫黄を燃やして亜硫酸ガスを起こすことでワインの酸化と過発酵防止、ぶどうの殺菌に使われている。胃の弱い人が摂取すると、胃痛を起こす可能性がある。

  • 使用食品:ワイン、ドライフルーツ、天然濃縮果汁など

実は「カテキン」も酸化防止剤

お茶から抽出される成分でよく知られているカテキンは、酸化防止剤としても使用されている。ツバキ科チャの茎や葉などを乾燥させたのち、水かエタノールで抽出する。酸化防止以外にも、殺菌、消臭効果があり、人体にはほとんど影響を及ぼすことのない安全性の高い酸化防止剤だ。ビタミンC、ビタミンE、クエン酸などと一緒に使用すると相乗効果があらわれる。清涼飲料水、菓子、水産加工品、食肉加工品、油脂などに使われ、カテキンを原料とした酸化防止剤が開発されている。

酸化した食品を摂取することと、酸化防止剤の含まれた食品を口にするのでは、どちらが身体への負担が大きいのかは悩ましいところだ。しかし、食生活において酸化防止剤は切り離せないものとなっており、安全性を考慮した規定量を守っていれば、過剰に反応する必要はないだろう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部