2017.1.30

増粘安定剤は身体に害? 食品添加物の真実

増粘安定剤の目的と役割は?

S_shutterstock_289295759「増粘安定剤」とは、水に溶解または分散して、食品に粘性や接着性をもたせる食品添加物である。使用目的により、増粘剤、安定剤、ゲル化剤と3つの呼び方で区別をしている。

食品に粘りやとろみをつけるための目的で使われる場合は「増粘剤」と呼び、少量で高い粘性がある。固体や液体である食品成分を均一に安定させ、形が崩れないようにする目的では「安定剤」、液体をゼリー状に固めるために用いる目的では「ゲル化剤」と呼ぶ。いずれも、食品の食感やのどごしをよくする役割がある。

食品によく使われている増粘安定剤とは?

食品によく使われている増粘安定剤3つを紹介する。

ペクチン

リンゴの皮や柑橘類、オクラやキャベツなどの野菜、海藻類に多く含まれており、これらのものから水で抽出して得られるもの。主成分は、メチル化ポリガラクチュロン酸という多糖類。口あたりをよくするため、増粘剤としてジュースに使われ、安定剤としてアイスクリームのシャリ感をなくすなど。また、ゲル化剤の用途では、ジャムやゼリーを固めるために使用する。添加物としてのペクチンは、おもに果物の皮から抽出しているが、皮に残留している農薬が懸念されている。

  • 使用食品:ジャム、飲料、ゼリー、アイスクリームなど

キサンタンガム

土壌に生息するグラム陰性桿菌であるキサントモナスから作られる。成分は、グルコール、マンノース、グルクロン酸などからなる多糖類。増粘剤として食品に粘りを出し、安定剤として分離しないようにする。毒性は少ないとされ、摂取量を守れば安全性は高い。ただし、トウモロコシのでんぷんを使って微生物を工業的に培養している場合があり、そのトウモロコシが遺伝子組み換えの可能性があるため問題視されている。

  • 使用食品:ドレッシング、ケチャップ、たれ類、練りわさび、練りからし漬物、つくだ煮、冷凍食品、レトルト食品など。

カラギーナン

海藻からとれるぬるぬるした成分を水で抽出したもの。主成分は、ガラクトースとアンヒドロガラクトースなどからなる多糖類。粘りをつける増粘剤、液体分離を防ぐ安定剤、液体を固めるゲル化剤の三役を担う。タンパク質やミネラルが多い食品に添加するとゼリー状に固まる力が強まる、暖かい場所でも溶けない、冷凍しても効果があるなどの特徴がある。

  • 使用食品:ゼリー、ジャム、プリン、アイスクリーム、調整豆乳、ソース、ドレッシングなど。

天然由来が多い増粘安定剤は安全?

増粘安定剤は、天然由来のものが多いが、天然だからといって必ずしも安全とは言い切れない。食品添加物には、必ずADI(1日摂取許容量)が決められているので、その範囲は守りたい。たとえばアラビアガムという増粘安定剤がコーラには使われている。大量にコーラを飲む人は、増粘安定剤や人工甘味料の摂りすぎになってしまうことを念頭に置いておきたい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部