2015.4.21

アンジェリーナ・ジョリーの乳腺切除と卵巣摘出、その社会的意義<前編>

彼女のアクションをがん罹患者はどうとらえる?

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先月、米女優のアンジェリーナ・ジョリーが、卵巣がん予防措置として卵巣と卵管の摘出手術を受けたことを公表した。約2年前の2013年5月には、乳がん予防措置として両乳房の乳腺切除手術を受けたことを公表。これらのニュースはいずれも広く報じられた。

彼女が予防のための手術を受けたのは、遺伝子検査の結果によるものだ。BRCA1と呼ばれる遺伝子が変異し、乳がんリスクが87%、卵巣がんリスクが50%あったという。日本人女性が生涯で乳がんあるいは卵巣がんにかかる確率はそれぞれ、約8.2%と約1.2%(※)のため、とても高い数字と言える。彼女の選択と公表について、その勇気に称賛の声がある一方で、過剰な予防措置を心配する声も専門家から出ているようだ。毎年検査を受けていれば早期発見できるため、本来は最低限の切除ですむという意見だ。

このように、賛否両論のある出来事だが、実際のがん罹患者はどうとらえているのだろうか。2002年、24歳で卵巣がんを経験したMさんは言う。「予防の意味での切除は、ひとことで賛否を言えるものではありません。生活環境、経済面、身体への負担、人生設計など、あらゆる面からの熟考が必要です。予防という観点ではほかにも選択肢がありますし、そのことは彼女も強調しています。でも、彼女がこういうアクションを起こしたのはすばらしいことです。24歳当時の私が知ったら、泣き崩れるほどの衝撃と感銘を受けたと思います」

手術でなくなるものは、臓器だけじゃない?

女性特有のがん。これによって手術を受ける女性の多くが、精神的に直面する問題がある。「もっともダメージが大きいのは、自分の“女性性”への喪失感です。私は左の卵巣と卵管を摘出しました。右の卵巣と卵管は残っているので、妊娠出産は可能です。問題はそういうことではなく、女性としてあるべきものがなくなる、アイデンティティのひとつを失ったような気持ちになってしまうのです。よほど達観していない限り、この気持ちに年齢は関係ないと思います」

乳がんだったら、その喪失感はさらに大きくなるはずだとMさんは指摘する。「入院していた当時、同じフロアに乳がんの手術をした女性がいました。30代前半で、既婚者でした。夕方になると、毎日欠かさずダンナさんがやってきて、泣き続ける彼女をなぐさめていました。彼女は一度、私に『見る?』と言い、胸を見せてくれたことがあります。血のにじんだガーゼやテープがたくさん貼りついていてよくわかりませんでしたが、彼女の泣き笑いのような顔は今も記憶に残っています」

乳がん予防のための手術を終えたあと、アンジェリーナ・ジョリーは『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄せた記事の中でこう語っている。「これで私の女性らしさがなくなったとはこれっぽっちも思いません」。この言葉に勇気をもらい、立ち上がることのできた女性はたくさんいるはずだとMさんは言った。

※2010年時点、国立がん研究センター「がん対策情報センター」より

【後編はこちら】「アンジェリーナ・ジョリーの乳腺切除と卵巣摘出、その社会的意義<後編>

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Colorda編集部