2016.2.8

「病は気から」は本当だった!

元気の秘訣・免疫細胞は腸と心でつくられる

Businessman by note board「病は気から」とよく言われているが、心と身体はつながっているというのは、多くの人が感じているのではないだろうか。では実際、くよくよしたり気弱になったり、心が元気でないとき、身体のなかで一体なにが起こっているのだろうか。

着目すべきは、血液中のいち成分、白血球を構成している免疫細胞だ。これは身体のなかへ入ってくるウィルスや細菌からわたしたちの身体を守ってくれている。さらに体内で起こっている異常、たとえば、がん細胞などを消滅させる働きも行っている。大役を担っている免疫細胞だが、その働きを決める要因は、腸が7割、心が3割だ。心とは自律神経のこと。つまり、心が弱ってしまうと、体の免疫細胞の数が減るということだ。

ストレスが免疫力を低下させる

「ストレスが胃腸の病気や突然死を引き起こす」可能性が、2017年8月に北海道大学の研究チームによって発表された。その報告によると、睡眠不足などの慢性的なストレスをマウスに与えたところ、そのマウスのうち自分の神経細胞を攻撃してしまう免疫細胞を血管に入れたマウスの約7割が、1週間ほどで突然死したが、ストレスを与えただけのマウスや免疫細胞を入れただけのマウスは死ななかったという。突然死したマウスから、脳にある特定の血管部分にわずかな炎症があり、この炎症は免疫細胞によって引き起こされ、新たな神経回路が生じて胃腸や心臓に不調をもたらしていることが判明したのだった。

これは動物実験の結果だが、臨床研究でも同じような報告がある。例えば、震災を経験した被災者を対象に、ストレスと免疫活性を調べた結果がある。「精神が安定している」と答えた被験者の免疫細胞の活性レベルは40%であったのに対し、「安定していない」と答えた被験者の免疫細胞は20%と半分であった。このことからも心が不健康だと、免疫力が落ち、病気にかかりやすくなるといえる。

気の持ちようで病気は治る! 治せる!

「病は気から」の作用を利用した治療法がある。偽の薬を本当の薬だと思って飲んでいると、なんらかの改善が見られる場合があり、これをプラシーボ効果という。また、SAT療法という心理療法が注目を集めている。これは筑波大学大学院の宗像恒次教授が開発した療法で、対話により心から不安や執着を取り除き、逆に愛や希望を芽生えさせ、ポジティブなイメージを創り上げる療法だ。がんやうつ病などの心身症の治療に用いられている。

身近なところでは、体温計で熱を測り、熱があることがわかってしまうと途端に具合が悪くなることがある。逆に、身体がだるいときも集中して仕事をしていると、忘れてしまうということもある。健康でいるためには、身体を鍛えることも大事だが、同じくらいメンタルの強さも大事だといえる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部