蚊に刺されやすいのはどんな人?
「自分は蚊に刺されやすい」と思っている人は、少なくないはずだ。巷では「O型の人は蚊に刺されやすい」「O型の血はおいしい」と言われているが、果たして本当にそうなのだろうか。
一般的に、蚊は、体温が高く二酸化炭素を多く発している人に近づくといわれている。要するに新陳代謝のよい人が刺されやすいのだが、運動をしたあとやアルコールを摂取したあとも、このような状態になるため、普段より蚊に刺されやすくなる。蚊に刺されやすい血液型については、これまでいくつかの論文が発表されてきたが、O型だけではなく「A型が刺されやすい」とするものや「血液型による差異はない」とするものなど、結論に統一性はなく、血液型で判断することは難しいと考えられてきた。
研究で判明! 蚊は遺伝子の違いを感知する!?
2015年4月、血液型ではなく「蚊に刺されやすいかどうかは遺伝子に関係する」という研究結果が、英国ロンドン大の研究チームから発表された。実験はまず、デング熱を媒介する「ネッタイシマカ」を容器に入れ、内部を仕切ってどちらかの区画に行けるようにした。そして、各区画の先には、一卵性双生児18組の姉妹と二卵性双生児19組の姉妹の血液を置き、蚊がどちらを好むかを調べたものだ。
その結果、一卵性双生児の血液は、2人分そろって寄せ付けるか、あるいは寄せ付けないないかのいずれかで、姉妹間に違いはなかったのに対し、二卵性双生児の場合は、姉妹間で差異が出たという。一卵性双生児は同一の、二卵性双生児は異なる遺伝子を持つことから、研究チームは、実験結果により「遺伝子の中に蚊を寄せ付ける成分が含まれる可能性がある」と結論づけた。
蚊に悩まされない日がやってくるかも!?
これまで、二酸化炭素を発することで体臭が強くなり、蚊を寄せ付けるといわれてきたのは、実は、遺伝子レベルで蚊の好むにおいを発していたとも考えられる。今後、研究を進めて蚊を引き寄せるにおいを特定できれば、黄熱病や2014年に日本でも発生したデング熱などの予防対策にもなるかもしれない。また、それぞれの遺伝子に合わせた虫よけ飲み薬の開発も期待したい。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)