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2016.8.4

Vol.3 人間ドック、まずはこれを選ぼう! 「受けてほしい検査BEST3」発表

「どのコースを受ければよい?」そんな疑問にお答えします!

人間ドックを受診される方から、「どのコースを受ければよいかわからない」と相談を受けることが多いです。そんな方にまず説明するのが、ご自身の病気のリスクです。もちろん、体質や遺伝的な要素もあるので一概には言えませんが、性別、年齢、既往歴、今まで受けた検査などで注意すべき点、受けてほしい検査をご説明します。ここで思い出していただきたいのは、前回お伝えした「人間ドック=健診+検診」ということ。つまりポイントは、健診にどのような検診を組み合わせるかです。

おさらいしてみましょう。

  • 健診とは:健康状態、生活習慣病を把握し、生活習慣を改善することにより、重篤な疾患にならないよう健康を維持することが目的
  • 検診とは:特定の病気(がんなど)を早期に発見し、早期に治療することが目的

健診は20代から受診して、生活習慣を見直すことをおすすめしています。いわゆる“生活習慣病”は、症状などがなく進行するためです。また、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は動脈硬化を引き起こす原因となり、心筋梗塞、脳梗塞などの重篤な疾患につながります。動脈硬化は進行しても、それ自体を治療することはできないため、なるべく若年のうちに生活習慣を見直すこと(治療)が大切です。できれば、「人間ドック学会」が推奨している1日人間ドックの検査項目を網羅することが望ましいです。

検査項目
身体計測 血圧 心電図 聴力
呼吸機能検査 胸部X線 上部消化器管X線 上部消化器官内視鏡 腹部超音波
血液検査 尿検査 便 内科診察  
オプション検査
乳腺 前立腺 C型肝炎 婦人科検診  

「人間ドック学会」推奨1日人間ドックの検査項目

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一度は受けてほしい検査BEST3を発表!

では、どのような検診を組み合わせるとよいでしょうか。まずは、一度は受けてほしい検査BEST3を挙げてみます。

1位:ABC検診:ピロリ菌抗体検査+ペプシノゲン検査

ABC検診は、「ヘリコバクター・ピロリ菌(通称ピロリ菌)感染の有無を調べる検査」と「胃炎(萎縮)の有無を調べる検査」を組み合わせて、胃がんになりやすいか否かをリスク(危険度)分類するものです。胃がんの方の95%はピロリ菌に感染しているといわれていますので、ピロリ菌が見つかれば除菌をして、その後は毎年、内視鏡検査を受けることを推奨しています。ピロリ菌に感染していなければ、胃がんのリスクは低いと判断できますが、2~3年に一度は食道を含めた検査を推奨します。

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2位:脳MRI・MRA検査

MRIで脳腫瘍、脳虚血性疾患(脳梗塞など)などを調べます。小さな虚血性変化(脳梗塞など)は加齢でも表れてきますが、年齢に比べて目立つ場合は動脈硬化や高血圧の影響が考えられます。動脈硬化は心筋梗塞の原因ともなりますので、生活習慣病の改善が必要となります。MRAでは、脳動脈瘤の有無などがわかります。くも膜下出血の約8割が脳動脈瘤の破裂が原因とも言われています。脳動脈瘤や脳腫瘍が見られなければ、2~3年に一度の検査でよいと考えられます。

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3位:大腸CT検査

大腸CTでは大腸ポリープの有無を調べます。大腸ポリープの約8割が腺腫(良性)と言われていますが、大きさが5mmを超えるとがんを含む可能性が高くなるとされています。ポリープが5mm以上では内視鏡でポリープ切除が望まれます。5mm以下では1年に一度大きさを確認します。ポリープがなくても、以降3年に一度は検査をしましょう。

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番外編(女性のみ):骨盤部MRI

貧血、生理痛や生理不順など悩んでいる女性は多いようです。成人女性の4人に1人は子宮筋腫があると言われています。がんだけでなく、普段の体調を左右する子宮や卵巣の病気の有無を一度は調べておくことをおすすめしています。

これらは検査をすることで、現在または今後の病気のリスクを推測できます。今後どのような検査をどの位の間隔で受診すればよいかの確認にもなるので、ぜひ受けてみてください。

マンモグラフィは年代によって向き不向きあり!?

ここからは、“女性特有の病気”についてみていきたいと思います。まずは、マンモグラフィで撮影した年代別の乳房の画像を見てみましょう。

図左から 20、30、40、50代マンモグラフィ

図左から 20、30、40、50代マンモグラフィ

白い部分は乳腺です。20代は乳腺だらけということがおわかりいただけると思います。出産時期にもよりますが、30代後半以降ぐっと減っていくのが一般的です。乳がんの病巣は、白く濃いかたまりとして写し出されます。しかし、乳腺が多いと見つけづらくなるのです。

そこで、20~30代前半は、乳腺が豊富な年代のため、マンモグラフィよりも乳腺超音波検査(乳腺エコー)を選択するとよいでしょう。検査は2年に一度をおすすめします。

30代後半~50代は、乳がんの罹患率が高い年代ですので、毎年の受診が望ましいです。マンモフラフィに乳腺エコーを組み合わせることで精度が上がります。自治体で2年に一度マンモグラフィを受診できるので、間の年に乳腺エコーを受診するという方法もよいでしょう。

60代以降は乳腺が少ないので、マンモグラフィ単体での検査でもよさそうです。検査スパンは少なくとも2年に一度を推奨します。

また、子宮がんは20代からかかるがんのひとつです。20代から子宮頚部細胞診で検査することをおすすめします。自治体で検診が受けられるので、うまく活用しましょう。

マンモグラフィは年代によって向き不向きあり!?

子宮頸がんと子宮体がんの違い

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女性は「2人に1人ががんになる」という事実

ここに、「女性は、生涯で2人に1人はがんにかかっている」ことを示すデータがあります。

累積がん 罹患リスク(女性 全部位)

累積がん 罹患リスク(女性 全部位)
2008年罹患・死亡データに基づく
公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計’13」

がん総患者数(女性)

がん総患者数(女性)
厚生労働省「平成23年 患者調査」

乳がんや子宮体がんの発生には、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」が深く関わっています。初潮が早い人や閉経時期の遅い人、出産経験のない人などは、エストロゲンの影響を長期間受けているため、乳がんや子宮体がんの発症リスクが高くなります。

年齢によってホルモンバランスが変化するため、かかりやすい病気が異なるのが女性の特徴です。ご自身のリスクを把握し、年齢に合わせた検査を取捨選択してみてください。

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Colorda編集部