2016.5.2

お口ケアが、長生きにも糖尿病にも効く!

歯周病になると、肺炎やクモ膜下出血にもかかりやすくなる

Toothbrush20歳代の約7割、30〜50歳代の約8割、60歳代の約9割が罹患している歯周病。歯周病は、歯周病菌が歯と歯茎の隙間から入り込み、炎症を起こす病気で、重症になると、歯肉がダメになり歯が抜けてしまう。老化で歯茎が痩せ、細菌が入りやすくなるので、中年以降はとくに注意が必要だ。しかしながら、歯周病は初期段階では自覚症状があまりなく、自分が歯周病であることに気がつかないうちに進行してしまっていることが多い。歯を失うと当然ながら噛めなくなる。そして柔らかい物や炭水化物ばかり食べてしまい、免疫力の低下と栄養不足を招く。また、話すことや顎の動きが減るため、脳にも影響し認知症の進行につながることもある。

さらに、歯周病菌が毛細血管から体内に入ると、全身に慢性的な炎症を起こす原因になるので注意が必要だ。肺に入れば肺炎になり、クモ膜下出血で破裂した動脈瘤から歯周病菌が発見されるなど、思いもよらぬところで病気の原因になるのが歯周病菌なのだ。

糖尿病も歯周病が原因?

最新の研究では、歯周病を患っている人は血糖値が高いことが明らかになっている。歯周病菌が体内に入ると免疫反応が起こるが、そのときに分泌されるサイトカインという物質が、血糖値を下げるインスリンの働きを妨げてしまうのだ。事実、歯周病の治療を糖尿病患者に行ったところ、血糖値が下がるという結果が得られている。

糖尿病予防の観点からも、歯周病治療などで口腔内を清潔に保ち、インスリンの働きを妨げないことが重要だ。

第一のケアは、歯をまめに磨くこと

歯垢1gあたりに細菌は1,000億個といわれている。口のなかは、食べ物や空気から雑菌を摂り込みやすく、36度程度の温度のため、菌が繁殖しやすいのだ。

まずは1日に2~3回の歯磨きを習慣にしよう。ポイントは力を入れてゴシゴシこすらないこと。ペンを持つ程度の力がベストだ。また、歯に対して45度の角度で1本1本、丁寧に磨いていくことも大切だ。さらに歯間ブラシで歯の隙間をケアすると、より細菌を除くことができて効果がある。

そのほか歯周病を予防するには、食事のときよく噛むことも大切だ。噛むことで唾液が十分に分泌され、唾液の殺菌作用で細菌の繁殖をある程度防ぐことができる。また食後にキシリトールガムを噛むことも、歯石や酸の発生を防ぐのに有効。甘いものが食べたくなったら、ぜひ、代わりにキシリトールガムを噛んで欲しい。

また、舌にも菌が付着しているので、舌の掃除も行うことをお勧めしたい。舌に細菌がついたままだと味覚が鈍くなり、塩分の摂り過ぎや食べ過ぎのもとになる。理想をいえば、3ヶ月に一度程度は、歯科に通い、たまっている歯石の除去とチェックをしてもらうのがベストだ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部