2017.7.3

コエンザイムQ10とは? 【アンチエイジング成分論Vol.1】

「抗老化」「抗加齢」。アンチエイジングとはなにか?

アンチエイジングとは、美容面、健康面において、加齢による老化現象を限りなく小さくすること、老化速度を緩めることをいい、「抗老化」「抗加齢」と訳される。老化による影響は、美容面では肌のシミやシワ、たるみ、健康面では認知症や骨粗しょう症、更年期障害、老眼などが挙げられる。

老化の要因は、加齢による細胞の機能低下や酸化ストレスの蓄積、ホルモンバランスの変化、免疫力の低下、紫外線のほか、遺伝子の変異などが考えられている。こうした老化現象を少しでも和らげることを目指し、現代ではさまざまな成分が研究されサプリメントなどで提供されている。今回は、「コエンザイムQ10」に注目してみよう

酸化から身を守るなど、身体を支えるコエンザイムQ10の働き

コエンザイムQ10は「ユビキノン」「ビタミンQ」とも呼ばれ、ヒトの細胞のなかにあるミトコンドリアで作られている補酵素だ。補酵素とは、消化や代謝で働く酵素(体内で合成されるタンパク質)を助けるものをいう。ミトコンドリアは生命維持のための活動エネルギーを生産する役割を持っており、コエンザイムQ10はこのエネルギー生産に必要不可欠な存在でもある。またコエンザイムQ10は、ビタミン様物質といわれるビタミンに似た働きもしている。ほかにも身体を酸化から守る抗酸化作用が報告されており、コエンザイムQ10が減少すると、エネルギー不足、免疫力の低下、血行不良や肌の不調などの症状があらわれることがある。

国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報によると、コエンザイムQ10の有効性は、ヒト試験情報の結果では「心疾患 (心不全・狭心症・心筋梗塞)」においてコエンザイムQ10は「有効性がある」とした結果は11件、「有効性は認められない」とした結果は3件、「血圧」においては「有効性がある」が3件、抗酸化効果は「有効性がある」が3件、「有効性は認められない」が4件、糖尿病は「有効性がある」が1件、「有効性は認められない」が2件などの報告がされている。

20歳をピークに減少する、コエンザイムQ10の効率的な摂り方は?

コエンザイムQ10はヒトの体内では、20歳をピークに減少する。加えて、喫煙、ストレスや病気などでも減ってしまうことがわかっている。

コエンザイムQ10を含む食品は幅広く、肉類、魚介類などに含まれており、イワシ、豚肉、牛肉、鶏肉、オリーブオイル、ブロッコリー、チーズ、大豆などから摂取できる。国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報によると、「西欧型の食生活をしているときの摂取量は1日5~10mg程度」。また「その吸収率は低く、摂取した量の60%は吸収されずに排泄される」という報告があり、日常の食事だけで摂取するのは難しい。同研究所は、「コエンザイムQ10は脂溶性のため、空腹時よりも脂肪の多い食事と共に摂取するとより吸収率が高まる」と、効率的な摂り方をアドバイスしている。

コエンザイムQ10を効率的に摂取するために、サプリメントも多く販売されている。厚生労働省の発表によると、いわゆる健康食品としては、「1日推奨量が60mgの製品が最も多く流通しており、30mgを超える製品が80%以上を占めているほか、300mgの製品も流通しています。また、米国においては、サプリメントとして1日推奨量が100mgの製品が最も多く流通しており、多いものでは1200mgの製品も流通しています(平成16年11月(財) 日本健康・栄養食品協会調べ)」と発表している。

コエンザイムQ10の安全性は?

コエンザイムQ10は、1957年に発見、命名されて以降研究が進み、1973年に世界で初めてうっ血性心不全治療の医療用医薬品として日本で認可された。その後、1980年代にヒトを対象とした臨床研究が進み、1991年には日本で一般用医薬品として薬局薬店での販売が認可され、1990年代に世界各国でサプリメントとして販売されたあと、2001年に日本では食薬区分の変更により食品成分としての利用が認可されている。

もともと医薬品として用いられてきたコエンザイムQ10。健康食品としても同様に安全性と有効性が期待されているが、同成分でも、医薬品と健康食品としてではさまざまな違いがあり、含有量の差や、品質の差、摂取時の体内吸収率の差などが挙げられる。サプリメントはあくまで食品として、また食事を補助するものとして活用してほしい。厚生労働省などは、コエンザイムQ10は、一般的に高用量でも副作用が出にくく、かなり安全性が高いものとしているので、日常のバランスのとれた食生活や運動を心がけつつ、サプリメントをうまく取り入れてほしい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部