2015.8.31

まさにSFの世界! バイオニクスレンズで視力3.0実現!?

たった8分の手術で世界が変わる

バイオニクスレンズOcumetics Technology(オキュメティック テクノロジー)の発表によると、瞳のレンズ部分を取り外し、代わりにバイオニック・レンズ(生体工学レンズ)を移植することで、視力を一気に回復させる技術の開発に成功したという。一度手術すると、視力が再度下がる心配もなく、100歳になっても視力1.0を維持することができ、希望するなら視力3.0以上にすることも可能とのことだ。特筆すべきは手術の手軽さ。手術時間はたったの8分。角膜に傷をつけないため、痛みがほとんどない無痛手術というのも特長だ。

バイオニクスレンズは後遺症なし!?

メガネやコンタクトレンズなしで視力矯正を行う、今までの一般的な手法はレーシックだ。レーシックとは、角膜中央部分をエキシマレーザーで薄くし、角膜の曲率を下げることで、視力矯正する方法だ。しかし術後に、ハローやグレアなどの視覚障害や、コントラスト感度低下、ドライアイ、ステロイド緑内障などの合併症が起こるリスクがある。また、一度削った角膜は戻すことができないため、術後の視力の再調整は難しい。さらに、白内障の手術を行う場合、眼内レンズの度数の決定が難しいため、度数にズレが生じ、手術の結果に影響を及ぼすことがあるといったリスクもある。2013年消費者庁が行った、レーシック手術経験者対象のアンケート調査によると、4割以上が症状や不具合を感じているという結果になった。

一方で、バイオニック・レンズは非常に近い距離から、中距離まで視点を合わせることが可能とされている。今のところ合併症や後遺症などもないと報告されており、2017年からカナダで実用化される見込みだ。そもそもバイオニクスとは生物のもつ優れた機能の仕組みを応用して工学システムや最新テクノロジーの設計や研究を行う学問領域。今後さらなる技術躍進の期待がもてる分野だ。

まるでSFの世界! コンタクトレンズの未来

2015年2月、米国科学振興協会の年次総会で3倍ズームの機能を備えたコンタクトレンズのプロトモデルが発表された。これはスイス連邦工科大学 ローザンヌ校と、米・カリフォルニア大学 サンディエゴ校が、米国防総省国防高等研究事業局から助成金を受け、いくつかの企業や研究所と共同で開発されているものだ。

このレンズの厚みはわずか1.55ミリメートルで、2つのレンズ機能をひとつに集約。等倍の機能では、裸眼で見える景色と同じになり、もうひとつの機能を使えば、3倍率でフォーカスすることができる。使い方はシンプル。右目をウィンクするとズームが起動し、左目をウィンクすることで望遠がオフになるという。加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、見ようとするところが見えにくくなる病気(加齢性黄斑変性症)に悩まされる患者を救う技術として期待が高まっている。

また、IMEC(Inter-university Micro Electronics Center)とベルギーのゲント大学は、コンタクトレンズに埋め込みを可能な、液晶ディスプレイの開発に成功したと発表。まだ計画は初期段階だが、将来的には視野内に地図を表示することが可能になる。ほかにも、健康データを集約するコンタンクレンズなど、ウェアラブル端末としても世界中で開発が進んでいる。老化による視力低下は仕方ないと思っていた時代は終結し、新たな時代が訪れるのはもうすぐかもしれない。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部