2015.9.7

再発率が高い、尿路結石症になる前にすべきことは?

10人に1人がかかる? 尿路結石症

尿路結石尿路結石症とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道に結石がある状態を総称していう。激痛をともなう場合もあれば、無自覚の場合もある。腎臓に石ができているだけでは気づかないケースがほとんどだ。多くは、結石が尿管に移動し、尿が流れにくくなって圧が高まると痛みが生じ、そこではじめて、結石ができていることを知る。

日本における年間有疾病率は人口10万人に対して121.3人、生涯の罹患率は男性の10.6人に1人、女性の24.4人に1人とされ(※)、40代以降は身近な疾病として意識したほうがいい。肥満、動脈硬化などの合併症も多くみられ、痛風やほかの腎疾患を併発する危険性も高い疾病だ。

結石ができやすい条件とは?

結石ができる原因は、おもに食生活。西洋化が進み、動物性タンパク質の摂取量の増加が背景に隠れている。
肉、つまり動物性タンパク質を体内で分解するときにシュウ酸が発生する。このシュウ酸は、腸でカルシウムと結合すると便になるが、シュウ酸の量が多いと、余った分は尿に排出される。尿の中でシュウ酸がカルシウムと結びつき結晶になると、排泄されにくくなり、結果として、腎臓に障害が出たり尿管が詰まってしまう。
つまり、シュウ酸の発生量を抑えるとともに、便として排泄されるよう、カルシウムの摂取は積極的にする必要があるにもかかわらず、日本人の現代の食事では、必要なカルシウムが摂取できていないのだ。

ほかにも、アルコールの多飲は、尿を酸性に傾け、結石ができやすい環境をつくってしまう。また、内臓脂肪が多いことも結石ができやすい条件。標準体型に見えても、かくれ肥満というケースもあるので、メタボには注意が必要だ。

バランスのよい食事で結石を排出させよう

長径5mm以下の結石であれば、自然に排出される可能性が高い。まずは肉類などの動物性タンパク質やアルコールを減らし、野菜中心で薄味の食事に切り替えよう。シュウ酸が多いホウレンソウやタケノコは、調理の際に、ゆでて作用の緩和を。また、シュウ酸を多く含むコーヒー、紅茶、チョコレート、プリン体の多いレバー、エビ、タラコなどの摂り過ぎには留意すること。ビタミンCは、抗酸化作用をもつ大切な栄養素だが、シュウ酸の発生を助けるので、サプリメントでの大量の補充は配慮しよう。

体内でシュウ酸に対抗して働く「オステオポンチン」というタンパク質があるが、結石の形成を促すため、過剰に活動すると尿路結石症を招いてしまう。防御策は、青魚、ブルーベリー、カボチャやニンジンなど抗酸化物質を含む食品を摂ることだ。

発症と再発率を下げるためにできること

内臓に問題がなければ、1日2ℓの水を飲み、尿のミネラル濃度を下げることを意識しよう。尿酸値を上げないために、寝る前の飲食は避け、夕飯は就寝の2~4時間前までに済ませること。また、運動不足も骨のカルシウムが尿に溶け出し、結石を作る要因になる。上下運動を含む階段の昇降やジョギングは、結石が動きやすくなるのでおすすめだ。

尿路結石症は、生活習慣を改善しないと5年以内に50%の確率で再発するといわれている。激痛を起こしたり、治療で身体に負担をかけたりする前に予防策をとっておこう。

※慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトより

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部