「いつまでも若々しく、健康でありたい」という願い。
実は昨今、アンチエイジング研究が進み、
その願いを叶える夢のようなメソッドが続々と明らかになってきている。
働き盛り、忙しい毎日を過ごしている人にこそ知ってほしい、
食べて健康に、そして若々しさを保つ、
そんな魅惑のアンチエイジング食材を紹介する。

2016.7.7

心臓病、認知症、うつ病になりたくなければ魚を食べよ!

魚介類の消費量と寿命は正比例する

Seafood on ice at the fish market
魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ3系脂肪酸は、心臓病や動脈硬化を予防する効果があり、魚の摂取は健康長寿につながることが知られている。実際に、2006年のWHOの報告によると、魚介類消費量が同一世界一位の、日本とアイスランドは、どちらも世界でトップの長寿国だ。国民一人当たりの魚介類の消費量と、その国の平均寿命との間には、正の相関が見いだされている。

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魚介類に含まれる、オメガ3系脂肪酸が心臓病予防の鍵

最初にオメガ3系脂肪酸と心臓病の関係が見いだされたのは、1970年代のグリーンランドに住むイヌイット族の研究が発端であった。イヌイット族とデンマーク人の食事内容を比較したところ、両者間の摂取カロリーや脂肪の割合はほぼ等しかった。しかし、心臓病による死亡率の割合を比較すると、デンマーク人の心臓病による死亡率が全死亡率の34.7%であったのに対して、イヌイット族の心臓病による死亡率はたったの5.3%であった。

食事中の「脂肪の量と質」が、心臓病の原因になることが知られている。そこで、イヌイット族とデンマーク人の食事の内容を比較すると、イヌイット族が魚やアザラシを食べていたのに対して、デンマーク人は牛肉や豚肉を食べていることがわかった。

さらに血液中の脂質の組成を調べてみると、デンマーク人のEPAが総脂質の0.2%だったのに対して、イヌイット族のEPAは総脂質の26.5%とオメガ3系脂肪酸の割合が高いことが分かった。

日本でもオメガ3系脂肪酸と心臓病の発症率に関連性が見いだされている。大阪大学医学部公衆衛生学の磯教授らの研究グループは、40~59歳の健康な日本人男女41,578名を12年間追跡調査した結果、魚摂取量が最も少なかった(1日約20g以下の摂取)群に比べて、それ以上の摂取群ではいずれも心臓病の発症リスクが低下していた。

さらにEPAとDHAの摂取量が、もっとも多い群の心臓病の発症リスクはもっともも摂取量が少ない群よりも40%以上も低いことが示された。

認知症予防にもオメガ3系脂肪酸

オメガ3系脂肪酸が心臓病だけでなく、認知症の予防にもなることが最近の研究により明らかにされた。

米国カリフォルニア大学医学部ロサンゼルス校の神経科学科のギゼール・リム博士らの研究チームは、アルツハイマー病を発症するネズミの餌のなかにDHAを混入し、DHAのアルツハイマー病の発症予防効果を調べた。

その結果、たくさんのDHAが餌に含まれていた群のネズミは、少量のDHAが含まれていた群のネズミに比べてアルツハイマー病の病変を示す脳の老人斑というシミが40% も減少していることを明らかとした。オメガ3系脂肪酸にアルツハイマー病の発症予防効果がある可能性が示唆されたのだ。

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うつ病とオメガ3系脂肪酸の関係

うつ病は20世紀になって増加しているが、オメガ6系脂肪酸を多く含む植物油の摂取が増加したことと軌を一にする。

シーフードをたくさん摂取する母親ほど母乳内のオメガ3系脂肪酸のDHA濃度は高く、産後うつ病の有病率が低い。実際に妊娠・出産期には母親には、無視できないオメガ3脂肪酸の枯渇の危険性があり、その結果として、産後のうつ病の危険性が高まっている可能性が指摘されている。さらに健常者と比較してうつ病患者はオメガ3脂肪酸の蓄積量が低く、オメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸の比率は有意に高いことが指摘されている。

このように心臓病やアルツハイマー病、うつ病の予防効果のあるオメガ3系脂肪酸だが、日本国民の魚の消費量は年々減少し肉の消費量が逆転しようとしている。この傾向に歯止めがかからないと、日本人の心臓病、アルツハイマー病やうつ病は増加を続けることになるだろう。


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Colorda編集部