愛知県がこんな健康への取組みをしているって知っていますか 1.愛知県の特徴 1-1.愛知県の人口統計と高齢化率 愛知県は日本のほぼ中央に位置する県で、県庁所在地は名古屋市です。古来の尾張と三河を合わせた地域で、1872年に名古屋県から愛知県に改められました。織田信長や豊臣秀吉、徳川家康など名だたる武将の出身地でもあり、名古屋城や犬山城といった史跡も多く残ります。また、トヨタ自動車などを中心に製造業が栄えており、工業製品出荷額が常に上位にランクする「モノづくり王国」でもあります。
2021年11月1日現在の人口は約751.4万人 です(推計人口)。愛知県の人口は、47都道府県のうち4位 (2021年1月1日現在)です。「愛知県人口動向調査結果年報(2020年)」によると、愛知県の人口は2019年にピークを迎え、2020年には1956年の県調査開始以来、初めて減少に転じました。なお、日本全体のピークは2008年です(国勢調査をもとにした推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所の2018年時点の推計によれば、現状のままでは愛知県の人口は2045年に689.9万人まで減少するとされています。
2020年10月1日時点での65歳以上の高齢者人口は約188.3万人で、高齢化率は25.2% です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、愛知県の高齢化率は全国平均を下回っていると言えます。しかし、出生数は減少傾向で推移し、高齢者数は増加していることから、愛知県では介護や医療体制の整備などを今後の課題に挙げています。
愛知県の人口と高齢化率の推移
*総務省統計局「国勢調査」をもとに編集部で作成 1-2.愛知県の健康寿命 健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間 を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、2016年における愛知県の健康寿命と「日常生活に制限のある期間の平均」です(カッコ内は全国平均)。日常生活に制限のある期間が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
健康寿命※2016年 日常生活に制限のある期間の平均※2016年 【参考】平均寿命※2015年 男性 73.06歳(72.14歳) 8.37年(8.84年) 81.1歳(80.8歳) 女性 76.32歳(74.79歳) 10.67年(12.34年) 86.9歳(87.0歳)
2016年現在の愛知県の健康寿命は、男性73.06歳、女性76.32歳で、これは47都道府県のうち男性3位、女性1位 です。健康寿命が男女とも全国の上位にあり、かつ「日常生活に制限のある期間の平均」は男女とも全国平均を下回っていることから、愛知県は全国でも健康的に長生きをしている人が多い地域と言えます。
「健康日本21あいち新計画」では、健康寿命と平均寿命の差を半減させるために、2022年度の男性の健康寿命を75歳以上、女性80歳以上を目標値 として県民の健康づくりに取り組んでいます。
2.愛知県の死因順位と割合 1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。 以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、愛知県と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 2位 3位 4位 5位 愛知県※2020年 悪性新生物(がん)28.1% 心疾患12.1% 老衰11.2% 脳血管疾患6.9% 肺炎5.1% 日本全体※2020年 悪性新生物(がん)27.6% 心疾患15.0% 老衰9.6% 脳血管疾患7.5% 肺炎5.7%
愛知県の死因順位は日本全体と同じですが、がんと老衰によって亡くなる割合は日本全体を上回っています。とくに老衰は日本全体より1.3ポイント高く、愛知県民が健康的に長生きをしている こと(「1-2.愛知県の健康寿命」を参照)とも合致します。また、心疾患が日本全体より2.9ポイントと大幅に下回っている点も特徴です。
3.愛知県のがん検診の種類・費用 3-1.自治体主導の「5大がん検診」 日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。 5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がん の5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
厚生労働省が示している指針は下記の通りです。全国各市区町村に対し、科学的根拠に基づいた効果が認められるがん検診を推奨しています。
種類 検査項目 対象者 受診間隔 胃がん検診 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ)のいずれか ・バリウム検査:40歳以上・胃カメラ:50歳以上 ・バリウム検査:年1回・胃カメラ:2年に1回 子宮頸がん検診 問診、視診、子宮頸部細胞診および内診 20歳以上女性 2年に1回 肺がん検診 問診、胸部X線検査および喀痰検査 40歳以上 年1回 乳がん検診 問診およびマンモグラフィ 40歳以上女性 2年に1回 大腸がん検診 問診および便潜血検査 40歳以上 年1回
これを受け、全国各市区町村は、基本的に上記に沿ってがん検診を実施しています。さらに、前立腺がん検診や子宮体がん検診などの実施、年齢の引き下げ、受診費の無料化などに取り組んでいる市区町村もあります。愛知県の県庁所在地である名古屋市では、5大がん検診に加えて前立腺がん検診を実施しているほか、すべてのがん検診が500円で受診できる 点が特徴です。
3-2.愛知県のがん検診の無料クーポン 市区町村によっては、がん検診の無料クーポンが配布されている 場合があります。愛知県の県庁所在地である名古屋市の場合、がん検診無料クーポンは以下の通りです。
種類 対象者※当該年度中に下記の年齢に達する方 無料になる検査項目 子宮頸がん 20~40歳の5歳刻みの年齢の女性 問診、視診、内診、子宮頸部細胞診 乳がん 40~60歳の5歳刻みの年齢の女性 問診、マンモグラフィ 大腸がん 40~60歳の5歳刻みの年齢の方 問診・免疫便潜血検査(2日法)
また、次の方は無料でがん検診を受診することができます。
・70歳以上の方
・生活保護世帯の方
・市民税非課税世帯の方
・65〜69歳の方で、介護保険料段階が第1段階に該当する方
・65〜69歳の方で、介護保険料段階が第2段階から第4段階に該当する方
がん検診の詳細は各市区町村ページをご参照ください。
・愛知県名古屋市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
・愛知県一宮市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
・愛知県豊橋市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
4.愛知県のがん検診受診率と受診率向上のための取り組み 4-1.愛知県のがん検診受診率の現状 下記は、2015年度から2019年度の愛知県全体の受診率の推移です。
愛知県のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 9.1% 29.2% 14.9% 26.5% 15.7% 2016年度 10.1% 15.0% 9.1% 15.6% 8.9% 2017年度 9.9% 17.7% 8.7% 16.8% 8.7% 2018年度 9.6% 17.7% 8.3% 15.0% 8.4% 2019年度 8.8% 14.6% 7.8% 15.0% 8.0%
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
自治体主導の日本全体のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 6.3% 23.3% 11.2% 20.0% 13.8% 2016年度 8.6% 16.4% 7.7% 18.2% 8.8% 2017年度 8.4% 16.3% 7.4% 17.4% 8.4% 2018年度 8.1% 16.0% 7.1% 17.2% 8.1% 2019年度 7.8% 15.7% 6.8% 17.0% 7.7%
愛知県のがん検診受診率は、胃がん検診、肺がん検診および大腸がん検診において日本全体を上回って います。ただし全体の傾向として、各検診とも年々受診率は低下傾向にあり、これは日本全体においても同様の傾向です。
2016年度から一部の受診率が顕著に増減している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。過去、国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
4-2.愛知県のがん検診受診率向上やがん予防のための取り組み がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、愛知県では次のような取り組みを行っています。ポスターやパンフレットなどの積極的な配布や掲示、中高生へのがん教育の推進、若年がん患者対策などを行っています。
・がん検診の啓発活動
10月の「がん検診受診促進キャンペーン月間」を中心にがん検診啓発イベントを実施。がん検診啓発ポスターを連携企業などに配布したり、「ピンクリボン街頭啓発キャンペーン」として通勤途中の県民にがん検診啓発グッズを配布したりしてがんの予防とがん検診の大切さを伝えている(2020年度は一部未実施)。
・がん教育への支援
がん診療連携拠点病院、愛知県がん診療拠点病院と協力し、がん教育外部講師リストを作成。さらに愛知県私学協会に加盟する学校に対して、外部講師の活用を希望する場合は支援ができることを周知したり、学校で活用可能ながん教育用リーフレットや指導参考解説書、パワーポイント資料を提供したりしている。
・肝炎ウイルス検査の無料実施
肝硬変や肝臓がんの発症リスクとなる肝炎ウイルスの検査を保健所または一部の医療機関で実施。対象は愛知県在住の方で、過去に一度も肝炎ウイルス検診の受診歴がなく、市町村や職場の健康診断などの検査機会がない方。費用は無料。
・禁煙支援医療機関(禁煙サポーターズ)データベース
喫煙による健康被害を減少するため、さまざまなたばこ対策を実施している。禁煙サポーターズでは最寄りの禁煙支援医療機関(禁煙サポーターズ)を検索できる。さらに「愛知県薬剤師会認定禁煙サポート薬剤師」の情報へのリンクもある。
5.愛知県の人間ドックの費用補助・助成 愛知県では各市区町村によって人間ドックの費用を助成している場合があります。詳細は各市区町村のWebサイトを参考にしてください。例として、岡崎市、一宮市、豊橋市の人間ドック費用補助を紹介します。
5-1.愛知県岡崎市の人間ドックの費用助成 ●人間ドック、ミニドック
【助成対象者】
岡崎市国民健康保険加入者(30歳以上)および後期高齢者医療制度加入者
【自己負担額】
・人間ドック
国民健康保険加入者:30〜39歳14,000円、40〜64歳12,000円、65歳以上9,300円
後期高齢者医療制度加入者:9,300円
・ミニドック
国民健康保険加入者:30〜39歳8,000円、40歳以上6,000円
後期高齢者医療制度加入者:6,000円
●脳ドック(定員550人)
【助成対象者】
市内に住民登録のある40歳以上の方(前年度に受診した方は申し込み不可)
【自己負担額】
16,000円
●肺ドック(定員30人)
【助成対象者】
市内に住民登録のある40歳以上の方(前年度に受診した方は申し込み不可)
【自己負担額】
10,500円
【助成条件(人間ドック、脳ドック、肺ドック共通)】
・受診は市内の指定医療施設のみ
・人間ドック・ミニドックにおけるオプションは事前予約制
5-2.愛知県一宮市の人間ドックの費用助成 ●人間ドック(先着400人)
【助成対象者】
一宮市国民健康保険に加入している25~39歳の方(妊産婦または妊娠の可能性がある方を除く)
【自己負担額】
10,000円
【助成条件】
・受診は市内の指定医療施設のみ
・一宮市が受診結果を受け取ることに同意すること
5-3.愛知県豊橋市の人間ドックの費用助成 ●脳ドック、肺がん検診、心臓ドック
【助成対象者】
以下のいずれかに当てはまる方。
・豊橋市国民健康保険被保険者で満25歳以上75歳未満の方で、前年度以前の保険税を完納している世帯の方
・市内在住の愛知県後期高齢者医療被保険者で、前年度以前の後期高齢者医療保険料を完納している方 (定員34人、申込順)
【助成額】
脳・肺・心臓のいずれか1つのドック(検診)費用の7割
【助成条件】
・受診は市内の指定医療施設のみ
・申し込みできるドック(検診)は1人につき1つ
・医療施設ごとに助成定員あり
・当該年度の当初募集で助成対象となった方、前年度および前々年度に同じ種類のドック(検診)助成を受けた方を除く
6.愛知県の人間ドック機能評価認定施設 6-1.機能評価認定施設とは? 「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設 です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
6-2.愛知県の機能評価認定施設 全国で390以上の施設が認定されており、このうち愛知県内の機能評価認定施設は2021年11月現在で25施設 あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。詳しくはこちら をご覧ください。
7.愛知県の健康増進への取り組み 愛知県では「健康日本21あいち新計画(2013~2022年)」を策定し、健康寿命のさらなる延伸に加え、健康格差の縮小、病気の重症化予防を中心に県民の健康づくりに取り組んでいます。
・健康情報ポータルサイト 「あいち健康ナビ」
県民の「誰もが・いつでも・どこでも」正しい健康情報を手に入れられることを目的とした健康情報の総合サイト。愛知県の委託により愛知県医師会が運営している。健康教育講座のWeb動画配信、健康に関するセミナーやイベント情報の配信、健康コラムの配信など、愛知県民の健康づくりに役立つ情報を提供している。
・健康ポイント事業「あいち健康マイレージ」
2014年度から県と市町村が連携して実施している健康ポイント事業。連携アプリ「あいち健康プラス」などを通して各種健診の受診など健康づくりに取り組むとマイレージ(ポイント)を獲得でき、一定以上マイレージを獲得すると県内の協力店で特典を受けられる。
・食育推進協力店登録事業
生活習慣病の予防のために、外食時にも食育に取り組みやすい環境を整備。生活飲食店における栄養成分表示を始め、食育や健康に関する情報を提供する施設を「食育推進協力店」として登録している。2つの登録区分があり、リーフレットや冊子などを通じて利用者に食育に関する情報提供する「情報提供店」と、提供するメニューの栄養成分を表示する「栄養成分表示店」に分かれている。
※本記事は2021年11月時点の情報を元に作成しています。