月経と無関係の乳房の張りには注意が必要!
月経中や月経の前後で乳房の張りを感じることは珍しくない。ホルモンバランスが大きく変動し、その、症状の一つとして乳房が張ることがあるのだ。だが、月経とは関係のない時期に乳房の張りを感じると不安が出るものだ。そこに痛みやしこりといった症状が加わると不安はさらに高まってしまう。実際、検査を受けてみると、そこにはさまざまな婦人科疾患が隠れていることがある。
乳がんの可能性も!? 乳房の張りと関係のある婦人科疾患
乳房の張りを呈する疾患としては、乳腺症や乳腺線維腫、それから乳がんなどを挙げることができる。乳腺症は30~40代の女性に好発する疾患で、ホルモンバランスが乱れることで発症する。乳房の張りだけでなく、疼痛を感じることもある。
乳腺線維腫は15~35歳に好発する疾患で、文字通り乳腺にできる腫瘍である。乳房にしこりが生じ、張りを感じることも珍しくない。ただし、良性腫瘍なので、しこりが小さければ経過を観察するだけに留まる。大きければ摘出することもある。
一方、悪性腫瘍の乳がんでは、経過観察ではなく、進行度に応じた対処が必要となる。しこりだけを切除する方法から、乳房すべてを摘出する方法までさまざまだ。ちなみに乳がんは、乳房の張りや痛みなどは初期に現れにくい。初期症状として、しこりや乳腺のひきつれ、血性の分泌物が乳頭から分泌されるという三つがあげられる。疼痛などが生じたらある程度進行している可能性が高い。
乳房に異常を感じたら受けておきたい検査
胸の張りと関連のある病気では、まず視診や触診が行われる。それに加えて、マンモグラフィーと超音波検査を受けることで、病態をさらに詳しく把握することができる。必要であれば、病変部の細胞を顕微鏡で調べる細胞診や乳房生検なども実施される。
以上の通り、月経中ではないにも関わらず、乳房の張りや痛みを感じる場合には、いくつかの婦人科疾患の疑いが生じる。とりわけ乳がんのように、張りや痛みが現れたときには、かなり進行しているケースもあるため、異常を感じたらすぐに検査を受けておきたい。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)