女性特有のがんに注意
現代の女性にとって30代前半は働き盛りであったり、結婚や出産を経験したりと、一生のなかでも多忙な時期であろう。その反面、30代を迎えた女性の80%以上が体力の衰えや何らかの不調を感じている。実際、統計的に見ても女性特有の病気が増加する時期で、日頃からのチェックが重要になってくる時期だ。
女性に特有のがんである乳がん、子宮(頸)がんの発症率はどれも40代以降でピークを迎えるが、急増するのは30代である。若い世代で発症したがんは進行が速いので早期発見、早期治療がポイントとなる。どちらも婦人科検診やレディースドックの検査項目になっているので1年に一度は受診するのが望ましい。
30代前半から多発する子宮筋腫と子宮内膜症
厚生労働省の調査結果によれば、30代女性が妊娠・出産を除いた病気で入院する原因でもっとも多いのが子宮筋腫である。30代で急増し、患者数は20代の約7倍にもおよんでいる。子宮筋腫はほとんどが良性の腫瘍であるが、不妊や流産の原因となる可能性がある。月経過多や月経痛などの症状をともなうこともあるが、無症状の場合も少なくないので検査を受けなければ判明しない。検査は簡単な超音波診断で、早期に発見できれば手術を受けなくても治療が可能である。
子宮内膜症は、本来、子宮内にしか存在しないはずの子宮内膜の組織が卵巣などの子宮外の部分に現れる病気である。30代前半から急増し、月経のある女性の約10人に1人の割合で発症すると言われている。月経周期に合わせて子宮の外で細胞の剥離や出血が起こるので、それらが体内に蓄積してさまざまな障害を起こす。卵巣内で発症すれば卵巣嚢腫となる。検査は血液検査、超音波診断、MRIなどによって行われる。月経痛や腰痛などの症状が現れることが多いが、無症状で進行しているケースもあるので、早期発見のためには定期的な検査が有効だ。
これらのほかにも貧血や甲状腺の機能障害、生活習慣病などさまざまな疾患が懸念され始める年代なので、一度、総合的な身体のチェック、メンテナンスを実施してほしい。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)