2016.6.30
膵臓がんの腫瘍マーカー

消化器がん、とくに膵臓がんの腫瘍マーカー「CA19-9」とは?

外分泌と内分泌を担う重要な臓器

3d illustration with highlighted pancreas
腫瘍マーカーは、体内にがんの腫瘍ができると、特殊な物質が大量につくられ、血液中に出現するという特性を利用した血液検査だ。今回は、消化器がん、とくに膵臓がんを発見するための腫瘍マーカーであるCA19-9を紹介する。

膵臓は胃の後部に位置している臓器で、外分泌機能と内分泌機能の両方を担っている。トリプシンや膵液アミラーゼ、リパーゼといった消化酵素を外分泌することで、タンパク質や炭水化物、脂質の消化を助ける。また、膵臓の内部に散在する細胞群で、島のような形のランゲルハンス島にある細胞は、グルカゴンとインスリンを内分泌して、血糖値の調節を行っている。このように、膵臓は人体の恒常性を維持する役割を担っているが、がんが生じるとその機能が低下する。目安となるのは、血中に現れるCA19-9という腫瘍マーカーだ。

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CA19-9は、膵臓がんに特性を示す腫瘍マーカーだが、肝臓がんや肺がんにも反応

CA(carbohydrate antigen)19-9は、膵臓がんに特異性を持つ腫瘍マーカーで、膵臓がんを発症した場合には80~90%の確率で陽性を示す。胆道がんでも同様に高値を示すことがあるが、これは膵臓と胆道が直接つながっている部分があることが影響している。ただ、どちらのがんも発症初期にはCA19-9を検出しにくい。がんの症状が進行していく過程で、CA19-9の濃度が高まっていくためである。

しかし、CA19-9は、そのほかのがんでも高値を示すことがあるため注意が必要だ。肝臓がんでは30~60%の確率で陽性反応を示す。確率は低下するが、肺がん、乳がん、卵巣がんでもCA19-9で異常値が表れることがある。そのため、血液中にCA19-9が高濃度で現れたとしても、がんが発症している臓器を特定することは難しい。

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CA19-9の基準値と次なる精密検査は?

CA19-9の基準値は、37U/ml以下(RIA法)となっている。この値を2倍以上上回る場合は、消化器系のどこかにがんが発生している可能性が高い。そこで必要となるのが精密検査で、腹部超音波検査や腹部CTなどを優先して受けることとなる。ただ、CA19-9の値が2倍以上に達していなくても、基準値を超えている場合は精密検査を受けることが望ましい。消化器系以外の臓器のがんや、そのほかの病変が見つかる可能性もある。

たとえば女性の場合で、乳がんや卵巣がんが疑われるケースではCA-125やCA-50といった別の腫瘍マーカーを調べるのもひとつの手である。それから上部消化管の粘膜に扁平上皮癌が発生している場合は、SCCと呼ばれる腫瘍マーカーが高値を示す。このように、CA19-9の血中濃度を検査することで、膵臓がんを始めとした悪性腫瘍の存在を調べることができる。精度は100%ではないものの、スクリーニング検査においては、非常に有用なマーカーといえる。

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矢後 尋志(やご ひろし)
この記事の監修ドクター
東京ベイサイドクリニック 院長
医学博士【研究テーマ:大腸癌発癌】/日本外科学会専門医/日本消化器内視鏡学会専門医/日本消化器病学会専門医/日本肝臓学会専門医/日本泌尿器科学会専門医/日本消化管学会胃腸科認定医/日本人間ドック学会認定医/内視鏡的胃内バルーン留置術認定医/内痔核四段階注射法認定医/日本医師会認定産業医

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Colorda編集部