2016.8.29
膀胱がん

膀胱がんの検査方法と治療法

喫煙者は注意したい膀胱がん

Bladder cancer medical concept as a urinary anatomical organ symbol with microscopic cancerous malignant cells spreading in the human body as a healthcare 3D illustration.日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第5回は、男性の罹患率が女性に比べて4倍もある、膀胱がんについて紹介する。

膀胱は、腎臓と尿管によってつながっている組織で、腎臓で生成された尿を一時的に貯蔵しておく臓器だ。膀胱に悪性腫瘍ができると、頻尿や排尿時の痛み、血尿、背中の痛みなどさまざまな症状が見られる。

膀胱がんの原因のひとつは喫煙とされており、男女とも60歳以降で罹患率が増加する傾向にある(※1)。

尿細胞診検査と膀胱鏡検査の比較

膀胱がんではまず、がんの有無を調べるために尿細胞診検査と呼ばれる尿検査が行われる。この検査では得られる情報が限られるため、CTやMRIなどの画像検査や膀胱鏡検査と呼ばれるいわゆる内視鏡検査も実施するのが一般的だ。そこでまず、尿細胞診検査と膀胱鏡検査の特徴を比較してみよう。

時間 費用 部位の特定 がんの種類
尿細胞診 短い 安い 不可 判定不可
膀胱鏡検査 長い 高い 判別可

尿細胞診は、患者の負担がもっとも少ない膀胱がんの検査法だ。採取した尿を専門機関で調べるだけで結果がわかるため、費用が安く、検査時間も短い。また、患者の精神的身体的苦痛も極めて少ない。ただ、尿細胞診検査では、がんの有無や悪性の度合いなど、大まかな情報しか得られない。

一方、膀胱鏡検査では尿道から直接内視鏡を膀胱へと到達させるため、カメラ映像で病変部を観察することが可能だ。器具を挿入する際に痛みや不快感を伴い、麻酔に加え鎮静剤を使うことが多いが、腫瘍が発生している部位やその数、大きさなど、膀胱がんに関するさまざまな情報が得られるという大きなメリットがある。何より膀胱がんの種類を判別できる点が大きい。

膀胱がんの種類

膀胱がんはおもに3種類に分類される。ひとつ目は「筋層非浸潤性がん」。表皮性のがんと上皮内がんを表し、膀胱筋層にはがんが浸潤していないがんだ。ふたつ目は「筋層浸潤性がん」。これは膀胱の筋層に浸潤し、リンパ節や骨などに転移する可能性があるがんだ。三つ目は「転移性がん」で、膀胱がんが他臓器に転移した状態を指す。

膀胱鏡検査を用いることで、筋層非浸潤性がんか筋層浸潤性がんかを大まかに判別することが可能だ。ただ腫瘍の浸潤度合いを正確に把握するには、TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)によって生検を行う必要がある。

筋層非浸潤性がんの治療法

筋層非浸潤性がんとは、膀胱がんが筋層という深い部分まで浸潤していないケースで、比較的軽度の膀胱がんといえる。そのため、腰椎麻酔を行って内視鏡で病変部を切除するTURBTが適応可能だ。そのほか抗がん剤などを用いて治療を進めていくが、患者の負担は比較的少ない。

筋層浸潤性がんの治療法

筋層浸潤性がんとは、筋層という深い層まで膀胱がんが浸潤したケースで、ほかの臓器への転移を起こしている可能性も高い。治療は全身麻酔下における全摘除のみならず、リンパ節郭清術や放射線療法、化学療法なども行われる。ステージⅣになると、外科処置が難しくなり、抗がん剤治療や緩和医療がメインとなってくる。

膀胱がんは、発症頻度が比較的低くまた有用な腫瘍マーカーがないが、喫煙者や年齢に応じて、まずは尿細胞診を定期的に受けることをおすすめする。

※1  国立がんセンターがん対策情報センター がんの統08 資料編5.部位別年齢階級別がん罹患率(2002年)

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部