2015.8.31

わずかな異常でもその影響は甚大! 甲状腺機能検査の果たす役割

全身の代謝を管理する甲状腺ホルモン

甲状腺
甲状腺は、全身の代謝をコントロールするうえで、非常に重要な役割を担っている。エネルギー産生量を決めたり、必要に応じてタンパク合成の調整も行ったりする器官である。その実態はホルモンを産生、分泌する内分泌器官であり、甲状腺に異常が生じると、全身倦怠感やうつ症状などの精神症状が現れてくる。

とくに、甲状腺機能の異常は女性に現れやすい。甲状腺機能検査は、一般的な健診には含まれないため、その異常が発覚するのも遅れる傾向があるので、定期的に検査を受けることをおすすめする。

検査では3つのホルモンに着目する

甲状腺機能検査では、血液の中に含まれる3つの物質の値を見る。ひとつは、脳下垂体から分泌されるTSH(甲状腺刺激ホルモン)だ。TSHは、甲状腺機能をコントロールするホルモンで、甲状腺からは離れた脳から分泌される。そのTSHによって調節するのが、甲状腺から直接分泌される甲状腺ホルモンだ。

つぎに、FT3(遊離トリヨードサイロニン)とFT4(遊離サイロキシン)という甲状腺ホルモンの値を見ることになる。つまり、TSH、FT3、FT4という3つのホルモンの血中濃度を見ることによって、甲状腺が脳からの指令に正常な応答を見せているかを調べるのだ。3つのホルモンの正常値は次の通りである。

FT3:2.2~4.1ピコグラム/ml
FT4:0.8~1.9ナノグラム/ml
TSH:0.4~4.0マイクロインターナショナルユニット/ml

FT3とFT4の値が高い場合は、甲状腺機能亢進症であり、値が低い場合は甲状腺機能低下症といえる。TSHの値が高い場合は、甲状腺機能低下症であり、値が低い場合は甲状腺機能亢進症となる。これはTSHが甲状腺に指令を出す立場であるため、濃度異常に応じた病態が真逆になるのだ。

甲状腺機能異常の裏に潜む病気とは

検査によって甲状腺機能亢進症と判明した場合、無痛性甲状腺炎などの炎症性疾患が疑われる。無痛性甲状腺炎では、甲状腺の細胞が破壊されるため、血液中に甲状腺ホルモンが流出する。その結果、全身の代謝が上がり、眼球突出などの症状が現れる。痛みはともなわないため「無痛性」という名称がつけられている。

女性患者の場合はバセドウ病を発症している可能性が高い。バセドウ病は日本人女性に多い疾患で、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される。つまり、全身の代謝が上がることで発汗過多をきたし、眼球突出といった症状が現れることもある。重症化すると甲状腺自体を切除しなければならなくなることもある。

いっぽう、甲状腺機能低下症と判明した場合は、橋本病が疑われる。橋本病は、甲状腺の炎症が慢性化した疾患である。炎症刺激によって甲状腺の細胞が破壊され、ホルモンの分泌に支障をきたすようになる。症状としては、便秘や集中力の低下などが挙げられる。不足したホルモンを薬剤によって補うのがおもな治療法となる。

このように、甲状腺機能検査によって異常値が出たら、甲状腺に何らかの障害が発生していると考えるべきだ。ケースによっては甲状腺そのものを失うことにもなるため、検査を受けるメリットは大きい。

坂口 海雲(さかぐち みくも)
この記事の監修ドクター
福島吉野スマイル内科・循環器内科 院長
日本内科学会認定内科医/日本医師会認定産業医/日本循環器内科学会所属医

人間ドックについて詳しく知りたい方

以外と知らない!人間ドックの詳細はこちら

Colorda編集部