発見が遅れがちな軟部腫瘍
日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第17回は、発生頻度が少なく自覚症状も乏しいため、発見が遅れがちな軟部腫瘍について紹介する。
軟部腫瘍とは、筋肉や血管、繊維性組織、脂肪、神経などの軟部組織に発生する腫瘍の総称。軟部腫瘍には、脂肪腫や神経鞘種、血管腫などの良性軟部腫瘍から、脂肪肉腫、繊維肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫などの悪性軟部腫瘍まで、非常にたくさんの種類の腫瘍が含まれる。悪性軟部腫瘍は、がんにあたる腫瘍のことであり、専門的には軟部腫瘍と呼ばれている。痛みなどの自覚症状が少なく、臓器の機能を直接的に低下させるものではないが、悪化すると運動機能を障害することがある。ここではそんな軟部肉腫の検査法や治療法について詳しく解説する。
軟部腫瘍を見つける、CTとMRI検査を比較
軟部肉腫では、まず医師による視診と触診が行われる。体表に近い腫瘍であれば、これらの検査で病変を触知することも可能だ。肉眼で病変を確認できない場合は、超音波検査によってスクリーニングをし、その結果、軟部肉腫の疑いが強まれば、MRIによって精密検査を行う。
被曝 | 組織型の判定 | 内部構造 | 位置関係 | |
---|---|---|---|---|
CT | あり | 不適 | 不適 | 不適 |
MRI | なし | 適 | 適 | 適 |
CTは被曝を伴う検査であるが、MRIと比べると検査時間が短く、腫瘍の広がりや深さをある程度まで詳しく調べることができる。一方、MRIは被曝のリスクはないが、大きな音が発生する狭い装置のなかで、30分程度、身動きせずに横たわる必要がある検査で、苦痛に感じる人もいるだろう。どちらも造影剤を使用する場合があり、そのときは注射が必要になる。
MRIは、被曝することがなく、任意の断面で病変を抽出できる。また腫瘍の種類ごとにMRI画像所見に特徴があるため、MRIを撮影することで、どのような種類の軟部腫瘍ができているかを診断する手がかりになる。さらに、造影剤を使用することで、腫瘍の質や範囲、活動性をより詳細に把握することも可能だ。
MRI検査の結果によっては、確定診断をするために生検を行う場合がある。生検とは、腫瘍の一部分を採取し、採取した腫瘍の細胞を顕微鏡で観察する病理検査のこと。確定診断するためには、確実に腫瘍の細胞を採取しないといけないため、腫瘍の一部を切開して採取する切開生検が推奨されている。
以上の検査を行い、軟部腫瘍の種類や、良性か悪性かの診断ができたら、治療方法を検討する。診断結果によっては、CT検査やPET検査などの検査を追加することがある。
軟部肉腫の治療法
軟部肉腫では、基本的に手術で腫瘍を切除する外科療法が行われる。ステージⅠ~Ⅱの軟部肉腫であれば、原発巣を切除するだけで治療が完了することもある。ステージが進むにつれて、切除範囲も広がり、転移の可能性も高くなるため、放射線療法を組み合わせるケースが増える。ステージⅣになると、外科療法だけでは対応できず、放射線療法、化学療法、緩和ケアなどを実施していくことになる。
このように軟部肉腫も、そのほかのがんや肉腫と同様に、悪性度が高まれば治療の選択肢も狭まっていくため、早期発見することが望ましい。

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)