2018.7.5

30分間寝ているだけ? PET検査の流れを知ろう【はじめてのPET検査 vol.4】

PET検査の流れを知ろう


今までの検査では見つけられなかった小さながんも見つけられ、病変の早期発見に役立てることができるとして注目されているPET検査。実際に受ける場合には、「どのような手続きがあるか?」「事前準備や食事制限は必要なのか?」「当日の制限はあるのか?」などの疑問について、PET検査の流れに沿って解説していく。

ステップ1:まずは、予約を取って問診票を提出

PET(ペット)検査は、当日来院してすぐに受けられる検査ではない。事前の予約が必要であり、多くの医療機関では電話やインターネットで予約を受け付けている。予約後、郵送された問診票に必要事項を記入し、提出する。医療機関によっては、事前に面談を行い必要な情報を聴取する場合もある。

ステップ2:検査前5時間以上は「絶食」が必要

PET検査では、検査前5時間以上は 絶食しなければならない。その理由はインスリンにある。検査前に食事を摂ってしまうと血糖値の上昇が起こり、インスリンが分泌される。インスリンは血液中の糖を筋肉などの組織へと移行するホルモンだ。もしこのホルモンがPET検査中にも働いてしまったらどうなるだろうか。

PET検査は、ブドウ糖を多量に消費するというがんの性質を利用し、ブドウ糖に類似した薬剤「18F-FDG」を投与し、がんをマーキングする検査だ。「18F-FDG」は、ブドウ糖に似ている「FDG」という物質に、目印の役割を果たす放射線を発するフッ素「18F(フッ素18)」をつけたもの。それがどのように全身へと分布していくのかをPET検査では観察する。

インスリンによって、ブドウ糖の動きに乱れが生じると、本来、がん細胞へと集積するはずだったブドウ糖が、筋肉などに移行してしまうことがあり、正確な検査結果が得られなくなってしまう。それだけに、検査前の絶食は不可欠だ。

PET検査の仕組みについては、『PET(ペット)検査とは? 【はじめてのPET検査 vol.1】』をあわせて読んでほしい。

ステップ3:ブドウ糖類似物質を投与し、30分〜1時間安静に

PETの撮影では、検査前にブドウ糖に類似した薬剤「18F-FDG」を注射で投与する。所要時間は5分程度だ。その後、このブドウ糖が全身に行き渡るのを待つために、30分~1時間程度安静に過ごす。

ステップ4:検査台に横たわり30分程度スキャンする

PETの撮影は、装置に付随した検査台に横たわって行われる。一般的なCTの装置と同じで、ドーナツ状のスキャナへと検査台ごと入っていく。検査時間は30分程度だ。ちなみに検査で投与されたFDGは、排泄までに1日かかる。

ステップ5:検査結果は後日

検査結果は後日、郵送で送られてくるケースが多い。検査結果には、文章および表などを用いてわかりやすく診断内容が記載されている。その内容に疑問などがあれば、医療機関を再度訪れ、説明を受けることをおすすめする。撮影された画像を参照しながら、丁寧に検査結果を説明してくれる。ちなみに、検査が終わった直後にも医師から直接、所見の概要が説明されることがあるが、それはあくまで概要に過ぎない。

トイレのあとは手を洗え! 検査後の注意点とは?

検査に使われる「18F-FDG」は、グルコースに放射能を出す成分・ポジトロン核種を組み込んだもので、先述した通り、微量ながらも放射能が発生するため、放尿後の手洗いなどは徹底するほうがよい。また、授乳中の場合は、母乳を通じて乳児へと放射性物質が移動するリスクがあるため、検査後24時間は授乳を控える必要がある。その他、検査数時間は身体からごく微量の放射能が発生しているので、放射線感受性の高い12歳以下の小児には、念のため近づかないほうがよいだろう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部