大量出血を引き起こす血管の病気
日本の死因トップ10の病気と検査方法シリーズ第6回は、2015年の人口動態統計月報年計で16,865人が死亡したとされる大動脈瘤及び大動脈解離について紹介する。
大動脈とは、心臓から全身へ血液を供給する出発点であり、胸部と腹部を垂直に走行している。そこに生じる腫瘤が大動脈瘤であり、病状が悪化すると大動脈解離を引き起こす。どちらも大量出血を伴うことが多く、処置が遅れれば死に至る。厚生労働省の2015年の人口動態統計月報年計(※1)によると、大動脈瘤及び大動脈解離は日本人の死因順位9位にランクインしている疾患なのだ。
大動脈瘤の検査方法
大動脈瘤は自覚症状に乏しく、健診の際にたまたま発見されたり、大動脈解離を起こしたりして、その存在が明らかとなるケースが多い。そのため動脈硬化など、血管の状態が悪い場合は定期的に以下のような検査を受けることがすすめられる。
- 超音波検査
- エックス線検査
- CT検査(Computed Tomography:コンピューター断層装置)
- MRI検査(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)
このうち超音波検査とエックス線検査では、動脈瘤を見逃す可能性もあるため、万全を期すのであればCT検査を受けておきたい。
大動脈瘤における腹部超音波検査
腹部超音波検査は腫瘤の有無を調べるうえで有用で、腹部に超音波を当てるだけで大動脈の状態が描出されるため、被曝のリスクもなく、身体的精神的負担は小さい。ただ、得られる画像がCTに比べ正確ではないため、大動脈瘤の存在を見逃す可能性はある。
大動脈瘤におけるエックス線検査
大動脈瘤は、健康診断の項目にも入っている、胸部エックス線検査で偶然見つかることが多い。ただ、エックス線画像は二次元であり、大動脈の状態を多角的に見ることは難しいため、検査としての精度はCTに比べ劣るといえる。
大動脈瘤におけるCT検査
大動脈瘤の検査として最も有用なのは、やはりCTだ。CTでは大動脈の状態を三次元的な画像で捉えることができるため、基本的に死角がない。また、映像も鮮明であり、微細な腫瘤も発見することが可能だ。ただし、検査には被曝が伴う。
大動脈解離の検査方法
大動脈解離とは、動脈硬化が進んだ高齢者に起こりやすい疾患である。大動脈の内壁が破れることからはじまるこの疾患は、大動脈瘤と同様、自覚症状に乏しい。内壁だけでなく、血管全体が裂けた場合は激痛が走り、大量の出血を伴う。
そんな大動脈解離の確定診断には、CT検査は欠かせない。また、動脈硬化や大動脈瘤が病気の発症の下地となるため、これらを患っている場合はこまめに検査を受けていきたい。
※1 平成27年(2015)人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省)

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)