男性の方が10倍罹患しやすい喉のがん
日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第18回は、2016年のがん統計予測で5,000症例が新たに罹患するとされている喉頭がんについて紹介する(※1)。
喉頭とは声帯が存在している器官で、咽頭と気管の間に位置している。この部位に生じる悪性腫瘍を喉頭がんという。喉頭がんは喫煙や飲酒がリスクファクターとなっており、罹患率の男女比では圧倒的に男性のほうが高い。その数は10倍にも昇る。
まずは内視鏡で視診断、次に生検
喉頭がんの検査は、喉頭鏡や喉頭ファイバースコープを用いて喉頭を観察することから始まる。喉頭ファイバースコープとは、器具の先端にカメラが付属された内視鏡で、口腔あるいは鼻腔を経由して喉頭へと到達させる。あらかじめ局所麻酔を効かせることで、器具を挿入するときの喉の違和感や反射による嘔吐などの身体的な負荷を和らげることが可能だ。喉頭がんの疑いが強まれば、鉗子を用いて病変部を採取し、病理診断を行う。
喉頭がんに有効な超音波検査
病理診断によって確定診断が下れば、続いて病気の転移や広がりを調べる。喉頭がんは頸部リンパ節に転移しやすい悪性腫瘍であるため、頸部超音波検査が非常に有用だ。超音波検査であれば、頸部に存在するリンパ節のみならず、血管や気管などの位置関係なども正確に把握することが可能だ。そのほか、喉頭がんではCTやMRIといった画像検査も実施されることがある。2つの検査には以下のような違いがある。
被曝 | 時間 | 費用 | |
---|---|---|---|
CT | あり | 短い | やや高い |
MRI | なし | 長い | やや安い |
喉頭がんではどちらの検査も基本的に頭頸部を調べるが、病態が進行して全身へとがんが転移している恐れがある場合は、検査の範囲をさらに広げる。CTはいわゆるX線検査の立体版であるため被曝リスクがあるが、MRIと比べて費用が安く、検査時間が短い。一方、MRIは強力な電波を使って、体内にある水分に作用して断層を撮影する方法のため被曝リスクがない。しかし大きな音が響く装置のなかで数十分、じっとしていなければいけないため、苦痛を感じる人もいる。また、MRIは動く臓器を検査することは不得意だ。そのため、肺や腸といった臓器を調べるのには向いていない。
喉頭がんの治療法
喉頭がんの治療は、基本的に放射線療法と手術療法の併用で進められる。治療によって声帯が失われると、術後に声を出せなくなってしまうため、治療はできるだけ声帯を温存する方針が立てられる。つまり、早期の喉頭がんでは切除する範囲を可能な限り狭く設定する。病期が進むにつれて切除範囲も広くなるため、声帯の温存は困難となる。ステージⅣになると、頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)や喉頭の全摘出に加え、化学療法も必要となってくる。
このように喉頭がんでは、発見された病期に応じて温存できる器官が限られてくる。それだけに、喉頭がんが疑われる場合は早期に検査を受けて、早期治療を受けておきたいものだ。
※1 2016年のがん統計予測(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター)
