2017.6.29
肝がんとウイルス

「B型肝炎ウイルス」、「C型肝炎ウイルス」による肝臓がんを調べる検査とは?【感染が原因のがんシリーズVol.2】

90%がウイルス感染が原因で発症する肝臓がん

肝臓がんは、肝臓の細胞ががん化する「原発性肝がん」と、ほかの臓器から転移する「転移性肝がん」のふたつに分けることができる。さらに原発性がんは、肝臓のどの部分ががん化したかで「肝細胞がん」、「胆管細胞がん」に分けられる。国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センターによると、日本ではB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスへの感染が原因で起こる肝細胞がんが90%を占めている。うち70%が、C型肝炎ウイルスの感染が原因で発症している。

肝臓がんの原因はほかにも、アルコールの多量摂取による「アルコール性肝障害」や、「非アルコール性脂肪肝炎」などがある。このように、肝がんは、肺がんや子宮頸がん同様、発生要因が明らかになってきている。

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おもに血液感染。肝炎ウイルスの感染経路

肝がんの発生要因で、注意したいのが肝炎ウイルスの持続感染だ。国立がん研究センター がん情報サービスによるとB型肝炎ウイルスは約10%、C型肝炎ウイルスは約70%がウイルス感染ののち慢性肝炎に至っている。年齢やウイルスの量、飲酒などの生活習慣も加わり、最終的に肝硬変や肝がんを引き起こすのだ。それを防ぐためには、B型肝炎やC型肝炎ウイルスの感染を予防することが必要となる。

肝炎ウイルスの感染経路は、血液感染だ。輸血や針刺し行為などがおもな原因となる。それに加えて性交渉による体液感染の可能性もある。通常の性行為では感染する危険性は低いことが報告されているが、B型肝炎のウイルス量が多い場合は感染する可能性が高まる。また、ウイルスを持った母親から子どもへ、妊娠や分娩時に感染する、母子感染の可能性もある。これはB型肝炎に多く見られる。

肝炎ウイルスの予防法は?

輸血や針刺しについては、現在では医療機関が取り扱いを徹底しているため、先進国での感染は少ない。母子感染は、母親がB型ウイルスのキャリアと判明した場合は、新生児にワクチン治療が行われ感染が防止される。性行為によるB型肝炎感染も、ワクチン接種を行い、HBs抗体を獲得すれば予防ができるようになっている。

肝炎ウイルスの感染を調べる検査

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センターによると、肝炎ウイルス感染者は日本で210〜280万人と推定され、その3割が無自覚と考えられている。まずは感染の有無を調べてほしい。B型肝炎・C型肝炎ウイルスの感染は血液検査で調べることができる。

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B型肝炎ウイルス検査

B型肝炎ウイルス検査では、血中の「HBs抗原」を調べる。陰性であれば感染はなし、陽性であれば感染していると分かる。陽性の場合、さらに詳しい検査を行う。検査項目は下記だ。

  • HBs抗原:陽性は、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染
  • HBs抗体:陽性は、過去に感染し治癒した状態を表す。HBVワクチンを接種した場合も陽性になる
  • HBc抗体:陽性は、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染。HBVワクチン接種者は陰性になる
  • HBc-IgM抗体:最近、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染したことを示す
  • HBe抗原:陰性は、一般にHBVの増殖力が強いことを示す
  • HBe抗体:陽性は、一般にHBVの増殖力が低下していることを示す
  • HBV-DNA:HBVのウイルス量を測定する

C型肝炎ウイルス検査

C型肝炎ウイルス検査では、血中の「HCV抗体」を検出する。陰性であれば感染の可能性は低く、陽性は感染の可能性が高い。陽性の場合、さらに詳しい検査として、「HCV抗体価検査」を行う。この結果が、「高力価」は、感染の可能性が高く、「中・低力価」の場合は、さらに「HCV核酸増幅検査」を行い、陽性の場合は、感染の可能性が高い、陰性の場合は、感染していない可能性が高いと判断される。

感染がわかったら、定期的な通院と肝がんを調べる検査を

肝炎ウイルスに感染している場合は、肝臓の状態をチェックしよう。また、肝がんを調べる検査を行う場合は、上述したような血液検査に加え、肝細胞がんの腫瘍マーカー「AFP」や「PIVKA-Ⅱ」などの数値を確認する。これらが異常値を示すと、がんの疑いが高まる。転移の有無や周辺臓器への浸潤などさらに詳しく調べるに、腹部超音波検査や腹部造影CTなどが行われている。

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上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部