2015.4.30

男性と女性でかかりやすい病気は違う?

痛風の罹患率は98.5%が男性という事実

ThinkstockPhotos-495841997「痛風は男性しかならない」という話を、誰もが一度は聞いたことがあるのではないか? もちろん女性もかかる病気なのだが、罹患率は男性が98.5%で女性はわずか1.5%(※1)と、圧倒的に男性に多い病気であることは事実だ。このように、男性と女性でなりやすい病気には差がある。胃がん(胃の悪性新生物)や肝がん(肝及び肝内胆管の悪性新生物)は男性の発症数が女性の約2倍に及ぶ。逆に認知症やアルツハイマー、高脂血症は女性の発症数が圧倒的に多い(※2)。病気のなりやすさだけでなく死亡率にも男女差があり、急性心筋梗塞の場合、発症数は男性が多いが、発症者の死亡率は女性の方が高い(※3)。

性差医療に注目高まる

性別による差異を考慮して行う「性差医療」は1990年代に米国で提唱された。日本では2003年頃から研究され始め、おもに研究されている項目は、

  • 男女比が圧倒的にどちらかに傾いている病気
  • 発症率はほぼ同じでも男女間でその経過に差のある病気
  • 生理的、生物学的解明が男性または女性で遅れている病態
  • 社会的な男女の地位と健康の関連など

の4項目で、その結果は、病気の診断、治療、予防法に反映されている。

男女差による病気の主な原因はホルモンだ。前述した痛風を例にあげると、原因となる血清尿酸値が、女性ホルモンの働きにより抑えられるため、女性はかかりづらい。つまり、女性でも50歳を過ぎ、女性ホルモンの分泌が低下すると、痛風のリスクはあがる。女性ホルモンが影響する病気はほかにも、骨粗しょう症が有名だ。患者数は女性が圧倒的に多く、男性の約3倍(※4)。閉経後、エストロゲンの分泌量が急速に減少することで、骨の新陳代謝のバランスが崩れ、スカスカでもろい骨が形成されてしまうことが原因だ。そのため、女性は骨折や転倒が原因で要介護状態になる比率も高く、じつに男性の3倍となっている。女性にとって女性ホルモンと病気は密接な関係といえる。

このように、性差の違いでなりやすい病気が違うことは、統計の数字で明らかだ。自身の身体の特性を認識し、生活習慣の見直しや予防に役立てたい。

※1 東京女子医大 調査結果(1992年)
※2 厚生労働省 平成23年(2011)患者調査
※3 熊本心筋梗塞研究会調査
※4 骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン 2006年版

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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Colorda編集部