2015.8.24

過去と現在の病歴がわかる! 免疫検査の内容と検査項目

血液には病気に関する情報が満載!

免疫検査
血液の中には、驚くほどたくさんの情報が含まれている。そのため、今現在、身体にどんな異常があるかや、どういった病原体に感染しているかなどを知ることができる。それに加えて、過去に感染したウイルスについても把握することができるのだ。

こうした患者の既往歴や現病歴などを探るのが、免疫検査である。免疫検査では、指標となる血液中の物質を数値化し、基準値との相対的な関係を見ていく。そうすることで、健康であるか否かだけではなく、どんな病気が疑われるかも知ることが可能になる。

肝炎ウイルスはB型とC型の感染を確認

免疫検査でスクリーニングされる肝炎ウイルスは、基本的にB型とC型である。これらのウイルスによって肝炎を発症すると、肝機能が著しく低下する。治療せずに放置しておくと、肝硬変へ移行し、最終的には肝がんの発症にまで至ることもある。それだけに、免疫検査を受けて早期発見することが望ましいといえるのだ。

実際の免疫検査では、B型の場合HBs抗原とHBs抗体を見ることになる。つまり、B型肝炎ウイルスそのものと、免疫応答によって産生された物質の両方を検査する。HBs抗原とHBs抗体の正常値は次の通りである。

HBs抗原:0.05IU/ml未満
HBs抗体:10.00mIU/ml未満

抗原と抗体の両方を調べる理由は、過去の感染と現在の感染を見るためである。抗体が検出されれば、過去に感染したことを意味し、抗原が検出されれば、今現在、B型肝炎ウイルスに感染していることになる。一方、C型肝炎ウイルスに関しては、HCV抗体のみを調べることになる。HCV抗体の正常値は次の通りだ。

HCV抗体:1.00S/CO未満

C型肝炎ウイルスでは、抗体のみを見るため、理論上は過去の感染しか知ることができない。ただし、現在進行形でウイルスが活動している場合も、HCV抗体は検出される。そのため、検査結果に応じて、追加の精密検査を受けることになる。

炎症の度合いまでわかる!

免疫検査では、肝炎ウイルス以外にも、梅毒への感染やリウマチの発症、それから炎症や壊死といった組織障害の有無を調べることもできる。

梅毒に感染すると、性器やその周囲にしこりや腫れなどが生じる。また、重症化すると全身の臓器に機能不全を起こすこともある。さらに、性行為によって感染が広がるため、検査による早期発見が望まれる。リウマチは、手足の関節などに激しい痛みを感じたり、慢性的な疲労感や貧血が起きたりするなど全身症状を引き起こす病気である。

炎症に関しては、全身の臓器からのサインを読み取ることができる。血管は全ての臓器に分布しているため、どこかで炎症が生じれば、血液へと情報が集約されていくのである。けれども通常の血液検査では、炎症を起こしている部位まで特定するのは難しい。

リウマチはRF(リウマチ因子)、梅毒はTP抗体、炎症などの組織障害はCRP(C反応性タンパク)という物質を見ていく。それぞれの正常値は次の通りである。

RF:19mg/dl以下
TP抗体:(-)
CRP:0.3以下

TP抗体の検査では、抗体の量ではなく、陽性か陰性かを知ることしかできない。そのため、基準値は(-)という表記になっている。CRPは組織障害の重症度に比例して、数値も上昇していく。つまり、炎症などの程度を、軽度から重度まで細かく見ていくことが可能なのだ。

このように免疫検査では、体の中に侵入した病原体の有無や炎症の重症度などを大まかに把握することができる。もしも異常が見つかれば、次は精密検査で異常の原因を突き止めていくことになる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部