2015.7.30

静かに進行する動脈硬化!? 脂質異常が起こるメカニズム

判断基準は、血中のコレステロール値

動脈硬化 血液中には、脂質異常に関わる主に2種類の物質が存在している。コレステロールと中性脂肪だ。脂質異常症とは、血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪が基準よりも多い状態をいう。

コレステロールには、HDLコレステロールとLDLコレステロールがある。
前者は、善玉コレステロールとも呼ばれ、脂質異常による動脈硬化などを防ぐ役割を担っている。後者は、悪玉コレステロールとも呼ばれ、脂質異常による動脈硬化などの原因となっている。実は、善玉と悪玉は全く同じコレステロール。体の隅々までコレステロールを運んでいるものを「悪玉」、一方、体から余分なコレステレロールを回収しているものを「善玉」と呼んでいるに過ぎない。

この両者の値が基準値から外れたときに、脂質異常症を発症する。その結果、全身の動脈硬化が進行し、最終的には脳梗塞や心筋梗塞といったシビアな病気を引き起こすこともあるのだ。

また厄介なことに、脂質異常症というのは自覚症状に乏しいため、気づいたときには、動脈硬化がかなり進行しているケースも珍しくはない。そういったことから、血液検査によって、定期的に脂質の状態をチェックしておくことは重要といえる。

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脂質異常症の基準値(空腹時採血による数値)について

  • 高LDLコレステロール血症:LDLコレステロール値 140mg/dl以上
  • 境界域LDLコレステロール血症:LDLコレステロール 120~139mg/dl以上
  • 低HDLコレステロール血症:HDLコレステロール血症 40mg/dl未満
  • (日本動脈硬化学会「動脈硬化症疾患予防ガイドライン」2012年版より引用)

上記のように、脂質異常症には「悪玉(LDL)コレステロールが多い場合」と「善玉(HDL)コレステロールが少ない場合」と「中性脂肪が多い場合」の三つのタイプがある。診断基準に示した数値が基本となるが、喫煙歴、高血圧や糖尿病の合併の有無、家族歴などの危険因子がある場合、脂質異常症のリスクは高くなる。

では、それぞれの値が異常値を示した場合、脂質異常症以外の病気も考えられるのだろうか。

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検査結果から見えてくる病気

血液検査の結果、脂質の値が高いと甲状腺機能低下症という病気も考えられる。甲状腺は脂質の代謝もコントロールしているため、その機能が低下するとコレステロールが血液中に残存してしまうのだ。

逆に、甲状腺機能低下症であると、LDLコレステロールが低値を示すこととなる。この場合、甲状腺に対する治療が必要になる。

ただし、睡眠や運動の不足、それから喫煙などが脂質異常の原因である場合は、そうした生活習慣を改善することで、症状も緩和されていく。同時に、油脂類を多く含む食材を避け、キノコや野菜、青魚を中心とした食生活に切り替えることが望ましいといえる。

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上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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Colorda編集部