2015.6.11
PET検診

がんの早期発見に有効なPET検診とは?

全身のがんを発見できるPET検査

PET検診 がん日本人の2人に1人が患うと言われているがんは、早期発見が肝心だ。勤務先が行う健康診断や人間ドックによって発見することもできるが、PET検診では一度の検査で全身のがんを発見することも可能である。

PET検診は、がん細胞が通常の細胞の3~20倍にも及ぶブドウ糖を摂取するという性質を利用した検査だ。ブドウ糖に近い成分が含まれている検査薬を体内に注入し、がん細胞に検査薬が集まることでがんを特定するのだ。検査薬には放射能に反応する成分が組み込まれており、小さながん病変でも、画像診断で確認することができる。レントゲンやCTなどで発見ができないような1センチ以下のがんや、転移したがんも同時に発見できる点も特徴だ。

PET検診の検診方法

医療機関ごとに内容は若干違うが、一般的な検査の流れは次のようになっている。

検査当日は約6時間前からの絶食が必要だ。検査薬を注射後、全身に薬剤をいきわたらせるために1時間程度、安静にする。次にPETカメラで全身を細かく撮影するのだが、所要時間は30分程度。その間、ただ横たわっているだけでいい。受診の際、身体への負担が少ないのも魅力だ。

通常PET検診では、肺がん、甲状腺がん、食道がんや子宮がん、卵巣がんといったがんが発見されることが多いが、がんの種類によっては発見が困難な場合もある。胃がんや胆道がんは、臓器に検査薬が集まりにくいため発見しづらい。また正常な状態でも検査薬が集まってしまう心臓、腎臓、脳や前立腺におけるがんも発見が困難であり、がんのすべてがPET検診でわかるわけではない。そのため、MRIやCTといったほかの検査と同時に行い、細かい分析をすることで、がん発見の精度を高めることになる。

アルツハイマー型認知症の発症発見にも

PET検査薬は正常な働きをしている脳には吸収されるが、アルツハイマー型認知症を発症している場合は検査薬が集まりにくいため、この検査で発症を疑うことが可能なのだ。また、心筋梗塞も発見できる。正常な心筋のエネルギー源は脂肪酸なのに対し、異常がある心筋ではブドウ糖をエネルギー源とするため、検査薬の吸収量によって心筋梗塞を発見できる。

PET検診の費用は、医療施設毎に異なるものの、だいたい10~15万円程度。がんやアルツハイマー型認知症、心筋梗塞の早期発見のために、数年に一度は受けておきたいものだ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部