若い女性に多い、貧血
生命の維持に欠かせない酸素は、血液中のヘモグロビン(血色素)に結合して体内のあらゆる組織に運ばれている。このヘモグロビンの血中濃度が低下した状態が貧血である。めまい、立ちくらみ、疲れやすい、手足のしびれなどの症状がみられる。貧血はその原因によって鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血、再生不良性貧血などに分類されるが、そのうち約90%を占めるのが体内の鉄分が不足して起こる鉄欠乏性貧血である。日本人における鉄欠乏性貧血の割合は男性が1%程度であるのに対して女性では約10%、特に若い世代の女性では約25%に達している。
貧血の検査と診断
ヘモグロビンはヘムという色素とグロビンというタンパク質から構成されている。ヘムを合成するためには鉄が必要とされるため、体内の鉄分が不足していると血中のヘモグロビン濃度が減少して貧血状態になる。体内の鉄分はその60~70%が血液中に存在しているので、不足すれば血液中の鉄分濃度(血清鉄:Fe)に減少がみられる。また、血中の鉄分不足を補うために鉄を輸送するトランスフェリンというタンパク質が増産されるため、鉄を結合できるトランスフェリンの量(総鉄結合能:TIBC)に増加がみられる。
ヘモグロビン濃度、Fe、TIBCの数値はいずれも簡単な血液検査によって知ることができる。それぞれの基準値は以下の通りである。
- ヘモグロビン(g/ dL) :男性 13.1~16.6 女性 12.1~14.6
- Fe(マイクログラム/ dL) :男性 60~210 女性 50~170
- TIBC(マイクログラム/ dL) :男性 250~385 女性 260~420
ヘモグロビン濃度が基準値を下回っていれば貧血であり、さらにFeの数値が低く、TIBCの数値が高ければ鉄欠乏性貧血と診断される。
軽度の鉄欠乏性貧血であれば医師の指導による食事療法で完治するが、症状が進行すると長期間にわたる鉄剤の服用などの治療が必要になることもある。場合によっては、ほかの内臓疾患が原因となっている可能性もあるので、医療機関で定期的に検査を受けることが望ましい。
