2015.9.14

検査して初めて気づく! 睡眠時の無呼吸と身体への深刻な影響

重病を引き起こす可能性のある、睡眠時の無呼吸

睡眠時無呼吸症候群日中に強い眠気を感じたり、睡眠時の窒息感や、覚醒時の倦怠感が慢性化したりしている人は、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)の可能性がある。これは、睡眠時に10秒以上の上気道閉塞を起こす病気であり、無呼吸が頻発することによって、動脈血の酸素飽和度が低下し、その結果、高血圧症や虚血性心疾患など、循環器系の病気を引き起こしていく。

ただ、睡眠時無呼吸症候群というのは、自覚症状が極めて低い病気であるため、検査によって初めて発覚するケースがほとんどだ。それだけに、心当たりのある人は、まず簡易検査を受けることをおすすめする。

無呼吸の回数や血中の酸素濃度を測る検査

睡眠時無呼吸症候群の簡易検査は、自宅で行うこともできる。パルスオキシメーターという携帯型装置で動脈血の酸素飽和度を測りつつ、同時に鼻の下に装着するエアフローセンサーで、睡眠時の無呼吸の有無やその回数を測定していく。すると、ODIとRDIという2つの値が明らかになる。

ODI(Oxygen Desaturation Index)は、酸素飽和度低下指数という意味で、動脈血の酸素飽和度が3%以上低下し、 2分以内に元の値まで戻った場合を1回とカウントする。この回数が1時間あたり15回未満であれば正常であるといえる。15~29回で中等度の睡眠障害の疑い、30回以上で重度の睡眠障害の疑いがあると考えられる。

RDI(Respiratory Disturbance Index)は呼吸障害指数という意味で、検査中にカウントされた無呼吸、低呼吸の総回数を記録時間で割った値である。1時間あたりに換算し、5回未満であれば正常であるといえる。RDIの値からわかる重症度は、次の通りだ。

5-19.9回 軽度
20-39.9回 中等度
40回以上 重度

これらの簡易検査で異常値が表れた場合は、精密検査である「終夜睡眠ポリグラフィー検査」を受けて、確定診断となる。

マスクで空気を送り込んで気道の閉塞を防ぐ

症状が軽ければ、睡眠時にマウスピースを装着して、空気の通りをよくする治療が施される。もしも肥満が原因で、上気道が閉塞傾向にある場合は、減量によって症状の改善を図ることになる。

中等度や重度の患者には、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)という、経鼻持続陽圧呼吸療法が採られる。これは、睡眠中にマスクから空気を送り込み、気道が閉塞するのを防ぐ治療法だ。マスクは鼻に装着するため、睡眠自体を妨げるようなことはない。このCPAPでも症状の改善が見られない場合は、外科手術によって、狭窄している部位を広げることもある。

このように、睡眠時無呼吸症候群というのは、自覚症状に乏しいにもかかわらず、重症化すると外科処置さえ必要になる病気である。それだけに早期発見が望まれ、検査を受ける必要性が高い病気といえる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部