2015.11.19

男性にも更年期障害があった!

症状はさまざま。イライラや性欲の減退も

男性 更年期男性更年期障害の正式な名称は、「加齢男性性腺機能低下症候群(late-onset hypogonadism: LOH症候群)」という。女性の更年期障害は閉経前後に発症するのに対し、男性の更年期障害はいつ発症するかわからない。40代以降、60代、70代でも発症の可能性があり、女性よりも長期間に及ぶ場合もある。

原因は、テストステロンという男性ホルモンの分泌が減ることだ。男性は女性と違い、閉経による大きなホルモンの変化はないが、加齢によって徐々に減少する。症状は、大きく分けて3つ、身体、精神、性に分類できる。

身体的、精神的な症状は女性の更年期障害に似て、疲労感、けん怠感、情緒不安定からうつ状態、イライラしやすくなるなどの症状がある。そのなかで男性特有の特徴といえば、ひげの伸びが遅くなることや、筋力が低下し、太りやすくなることから生活習慣病のリスクが増加することだ。また、性的な症状として、ED(勃起不全)や性欲の減退などがあげられる。同じ症状が毎日続くのではなく、さまざまな症状が日替わりで出てくる。

“できるオトコ”に欠かせないホルモン「テストステロン」の働きとは?

テストステロンの働きは、男性の身体や心の状態を左右する。一般的に知られている、ヒゲや太い骨格といった男性らしさや、筋肉の増加によるたくましい身体をつくり、バイタリティを高める作用、男性性器の発育と機能の維持、性欲を高める作用がある。

また、一酸化窒素を供給し血管の健康を保つ働きがある。この物質は血管を拡張させ、生活習慣病にかかるリスクが低下する。それとともに、精神活動や老化を司るミトコンドリアを健康に保つ作用があり、身体に重要な役割を果たしているだけでなく、認知機能など脳の働きも任されている。

それだけではない。神経伝達物資のドーパミンの分泌をうながすことで、何かをする意欲や幸福感を得ることができ、仕事や家庭においてもパフォーマンスを発揮できる。集中力や、冷静な判断、戦略的思考ができるのも、テストステロンの作用だ。その上、イライラしにくく、うつの抑制効果がある。このようにテストステロンは男性に欠かせないホルモンだといえる。

早期発見が治療の鍵

「寝つきが悪い」「イライラしやすくなった」「朝勃ちが減った」「仕事のミスが増えた」などという症状が出たら、メンズクリニックや男性更年期外来に足を運んでほしい。近くにそれらが無い場合は泌尿器科の受診をおすすめする。

治療方法は、漢方、向精神薬、ホルモン補充療法が一般的だ。漢方は東洋医学の見地から症状の改善を行い、向精神薬は精神的な症状の緩和を行う。
ホルモン補充療法は、テストステロンを直接体内に補充する方法だ。男性更年期障害の直接的な解決に結びつき、効果も高い。ただし副作用としては精子の形成を妨げる作用がある。そのため、子どもを持ちたい場合は、オススメできない。
生活習慣の改善も有効だ。酒やたばこをやめ、適度な運動と、腹八分目の食事、規則正しい生活は更年期症状の軽減につながる。

女性の更年期障害と違い、男性は時間を置いても改善されることはない。また、女性は閉経というイベントがあるのでまわりに経験者も多く相談しやすいが、男性はそのような環境がなく、相談できずに一人で抱え込んでしまいがちだ。また「年のせいだろう」と放置することで、さまざまな病気リスクが出てくる。少しでも症状に気づいたら、すぐに受診するとよいだろう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部