2017.1.23

発色剤は身体に害? 食品添加物の真実

発色剤の目的と役割

S_shutterstock_428503885「発色剤」とは、肉や肉の加工食品、魚卵などの変色や腐敗を防ぎ、鮮やかな色に変化させることのできる食品添加物である。ハムやソーセージ、いくら、すじこなどに用いられている。役割のひとつ目は、原料の色素を固定し色調を整えること。赤い色素を固定し、加熱や酸化によって褐色化することを防ぐ。ふたつ目は、細菌の増殖を抑えること。とくに食中毒を引き起こす「ボツリヌス菌」に対して高い抑制効果がある。3つ目は、原料の臭みを抑え、風味を出すことで、発色剤を使っていないハム、ソーセージなどは、食べ比べると肉の臭みが残っているとされている。

食品によく使われている発色剤は?

食品によく使われている発色剤ふたつを紹介する。

亜硝酸ナトリウム

多くの加工食品に使われている発色剤で、畜肉に含まれる筋肉色素であるミオグロビンや、血色素のヘモグロビンに作用し、加熱や酸化による変色を防ぎ、食品の赤色を保つ。一方で、アミノ酸の分解物と化合して発がん性物質を生成する可能性が指摘されており、使用量が制限されている。

  • 使用食品:ハム、ソーセージ、ベーコン、コーンビーフ、すじこ、たらこなど

硝酸カリウム

食肉製品の加工、酸化による黒ずみを防ぎ、ピンク色を保つ。亜硝酸ナトリウムと一緒に使われることが多く、チーズには発酵調整剤としても使用される。水や野菜など天然なものにも含まれており、ADI(1日摂取許容量)は、 体重1kgあたり5mgだ。動物実験では、1回に多量に与えると食欲不振や軽度のうつ症状、呼吸困難などを引き起こし、最終的には口から唾液を流し、結腸痙攣を引き起こして横に倒れたと報告されている(※1)。

  • 使用食品:ハム、ソーセージ、ベーコン、サラミなど

発色剤と着色料の違いとは?

着色料は、食品に色をつけて見た目をよくするために用いられる。それに対し、発色剤は、食品の色素に作用し、本来の色を固定し安定させるためのものである。これらふたつを区別するのに、着色料は絵具で色を塗る、発色剤はニスを塗る、という表現が使われている。

また、「発色剤不使用」という表記には裏がある場合があるので注意したい。発色剤を使用していないハム、ソーセージは岩塩を使用していることが多く、岩塩には発色剤として使われる硝酸塩がもともと含まれているのだ。一方で、発色剤不使用のハム、ソーセージを食べて食中毒を起こし死亡する、という事故がヨーロッパで発生したこともある。

食卓やお弁当によく登場する、ハム、ソーセージ類と発色剤は、今のところ切っても切り離せない。しかし、食品添加物全体に言えることだが、摂取量には注意が必要だ。子どもや妊婦は摂取を控える、そのほかの人も食べる量を調整することが必要だろう。

※1 日本医薬品添加剤協会

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部